以前、NPO法人設立によるメリットとデメリットについてご紹介しました。その記事では税制面での優遇措置が受けられるメリットがある一方で、事務作業が増加するデメリットがあることについて軽く解説しましたが、今回は実際にNPO法人を設立する際に求められる要件についてお話ししようと思います。
①非営利要件
まず第一に、NPOは営利を目的としていませんので、事業によって生じた利益は分配せず、団体の活動目的を達成するための費用に充てる必要があります。もちろん実際に働いてくれた人に給与や役員報酬を支払うことは問題ありません。
そしてNPOが法人格を取得するためには、その主な活動が法律で定められた特定非営利活動20分野のいずれかに該当するものでなければなりません。
◆特定非営利活動とは
不特定多数のものの利益の増進に貢献することを目的とした活動であり、特定非営利活動促進法(NPO法)第2条関係別表に指定されています。
1. | 保健、医療又は福祉の増進を図る活動 |
2. | 社会教育の推進を図る活動 |
3. | まちづくりの推進を図る活動 |
4. | 観光の振興を図る活動 |
5. | 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動 |
6. | 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動 |
7. | 環境の保全を図る活動 |
8. | 災害救援活動 |
9. | 地域安全活動 |
10. | 人権の擁護又は平和の推進を図る活動 |
11. | 国際協力の活動 |
12. | 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動 |
13. | 子供の健全育成を図る活動 |
14. | 情報化社会の発展を図る活動 |
15. | 科学技術の振興を図る活動 |
16. | 経済活動の活性化を図る活動 |
17. | 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動 |
18. | 消費者の保護を図る活動 |
19. | 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動 |
20. | 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県または指定都市の条例で定める活動 |
◆特定非営利活動に支障が生じるほどその他の事業を行わないこと(第5条)
その他の事業とはようするに副業のことです。副業をしても良いけど本業である特定非営利活動に影響したらダメだ、とNPO法は言っていますので事業費や赤字には注意です。
①その他の事業の事業費が特定非営利活動の事業費を上回ったらダメ
②その他の事業で赤字を出したらダメ
③その他の事業の収益は、特定非営利活動に充てないとダメ
副業の事業費が主活動を上回ったり赤字を出すのは許されません。NPO法人は事業に対する制限が結構キビしいですね。
②人的要件
◆社員
NPO法上では、NPOの構成員を社員と呼びます。NPOが法人格を得るには最低10人の社員が必要となりますので、まずは賛同し参加してくれる人を10人集めましょう。そして一般的には正会員がNPO法上の社員となります。
株式会社でいうところの株主にあたる存在が社員で、株主総会にあたるのが総会です。社員は総会で議決権を持っていて、NPOの意思決定はこの総会での議決によってなされます。
◆役員
役員とは理事と監事のことです。NPO法人では最低3人の理事と、1人の監事が必要となります。
株式会社でいうところの取締役が理事、監査役が監事ですね。監事は理事の職務をチェックするのが仕事です。
また役員には親族規定がありますので注意してください。
①各役員について配偶者若しくは3親等以内の親族が2人以上いないこと
②配偶者もしくは3親等内の親族が役員総数の3分の1を超えて含まれないこと
つまり自分以外に役員になれるのは1人までで、役員総数6名以上なら自分ともう1人までは役員となれますが、それ以上の親族を役員にすることはできません。
◆事務局
規模の大きなNPO法人では設置されますが、小規模な最低人数10人でスタートするようなNPO法人では設置されないことがほとんどです。
③その他の要件
◆宗教活動、政治活動を主目的にしてはダメ
◆役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の三分の一以下であること
◆特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として、その事業を行ってはダメ
◆特定非営利活動法人は、これを特定の政党のために利用したらダメ
◆暴力団やその構成員はダメ。暴力団を辞めて5年を経過しない者の統制の下にある団体もダメ
④まとめ
今回はNPO法人の要件について軽く説明させてもらいました。ネックになるのは最低10人の社員を集めることかもしれません。非営利型一般社団法人が社員2人、理事3人でスタートできるのに比べると10人は多いですね。
また定款を作成する際には、事業が特定非営利活動20分野に該当するように記載しなければなりません。その他には事業計画書と活動予算書を2年度分作成して提出する必要があるので、設立に漕ぎ着けるには書類作成が大変です。
弊所ではNPO法人、株式会社、一般社団法人などの設立をサポートしております。定款作成や事業計画書作成、役所との打ち合わせまで全面的にお手伝いさせていただきますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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