NPO法人を設立したい! そのメリット&デメリット

 近年ボランティア活動や社会貢献活動を目的として、NPO法人を設立するケースが増加しています。ですがNPO法人の設立には所轄庁による厳密な審査がありますので、株式会社や一般社団法人を設立する場合に比べて手間と時間がかかります。
 そこで今回のテーマはNPO法人設立のメリットとデメリットです。手間をかけてでもNPO法人を設立するべきか、他の法人形態を模索するべきか考えていきましょう。

①そもそもNPO法人とは?

 Non Profit Organization = 営利を目的としない組織

 この頭文字をとってNPOと言い、ボランティア活動や社会貢献活動を目的として組織される団体です。営利を目的としないといっても、利益を上げてはいけないという意味ではありません。あくまで利益があがっても構成員に分配せず、団体の活動目的達成のための費用に充てるのが「営利を目的としない」の意味です。
 当然、実際に働いてくれた人に給料役員報酬を支払うのは何の問題もありません。そもそも継続して活動を広げるには利益が出なければ不可能ですし、このあたりの考え方は一般社団法人と同じですね。

 また、NPO団体のうち、特定非営利活動促進法(NPO法)に基づいて法人格を取得した特定非営利活動法人を一般的にNPO法人と呼んでいます。

◆NPOとよく似た団体で、NGO団体というものがあります。

 Non Governmental Organization = 政府ではない組織

 略してNGO団体と呼ばれますが、NPO法人のように法律で定義された団体ではありませんので、NGO法人というものは存在しません
 外務省によると”貧困、飢餓、環境など、世界的な問題に対して取り組む市民団体であれば、NGOと呼ぶことができる”とされています。また、外務省はNGO団体が法人格を必要とするなら、NPO法人になるか公益法人(一般社団・財団法人、公益社団・財団法人など)として法人格を取得するように言っています。
  ※例 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン ⇒ 公益財団法人
     グリーンピース ⇒ 一般社団法人
     ジャパン・プラットフォーム ⇒ 認定NPO法人

 NPOとNGOに大きな違いはあまり無いので、主に日本国内で活動する場合はNPOといい、国外向けに活動している場合はNGOになると考えてよいでしょう。

②NPO法人のメリット

◆社会的信用が高まる

 世間一般からの印象として、行政庁の認証を得ているNPO法人と任意団体、営利法人ではやはり差があります。
 特に昨今では国や自治体、公的金融機関によるNPO法人への積極的な支援が行われていますので、各種補助金や助成金、融資が受けやすいという大きなメリットがあります。

◆設立時の費用が少なくて済む

 株式会社であれば登録免許税が約15万円かかり、一般社団法人なら約6万円、合同会社でも約6万円の登録免許税が必要になりますが、NPO法人の場合はこれらの登録免許税が必要ありません。

◆税制上の優遇措置を受けられる

 通常の法人としての税制上のメリットが受けられるのは当然として、毎年の税制の減免申請を行えば収益事業以外の事業には全く法人税がかかりません。NPO法人設立の最大のメリットと言えるでしょう。また上記したジャパン・プラットフォームのように認定NPO法人となることができれば、さらなる税制上の優遇措置が受けられます。ちなみに認定NPO法人となるには、NPO法人として2年以上の活動実績と、所轄庁の認定が必要です。

③NPO法人のデメリット

◆設立までに時間がかかる

 株式会社や一般社団法人に比べ、設立にかかる時間が長く4~5ヶ月は必要です。また提出する書類も多く、所轄庁の審査があるため正確な書類作成が求められます。もし書類に不備があって作り直した場合、また審査待ちとなってしまうので更に時間がかかります。

◆情報開示義務や事務手続きが大変

 厚生労働省によるとNPO法人は自らに関する情報をできるだけ公開することによって、市民の信頼を得て、市民によって育てられるべきとされています。そのため広範な情報公開制度が定められています

事業報告書収支計算書などの様々な書類を事務所や所轄庁に据え置いて、一般市民の誰もが見られるようにする
・毎年これら事業報告、収支計算書などを所轄庁に提出する

 デメリットとして特に大きいのが“事務手続きが煩雑で大変だ”ということです。
 NPO法人には所轄庁への報告義務がありますので、事業報告書や収支計算書は毎年提出しなければなりません。また理事の任期は2年なので、2年ごとに役員登記を行わなければなりませんし、定款を変更した場合等も届出が必要です。
 NPO法人であっても法人市民税と法人県民税の均等割りについては原則通り課税されてしまいますので、毎年減免申請をして免除してもらう手続きが必要になります。

 法人化せずに任意団体としてボランティア活動をしていた時に比べると、書類作成の事務負担量は格段に増大します。

④NPO法人と非営利型一般社団法人 どちらにするべき?

 さて、NPO法人のメリットとデメリットを軽くまとめてみましたが、以前にご紹介した非営利型一般社団法人との比較表を載せますので見てみましょう。

 NPO法人の方が非営利型一般社団法人に比べて税制面で有利なのは間違いありません。その一方で設立に必要な人数が10人と多い審査があるため設立期間が長い、所轄庁への報告義務があるといったデメリットがあります。
 NPO法人と非営利型一般社団法人、どちらが良いとは一概には言えないですが設立しやすいのは非営利型一般社団法人と言えるでしょう。

 信用や税制面でのメリットと、増大する事務作業の負担を天秤にかけて判断する必要があります。

⑤まとめ

◆NPO法人化した場合、税制上のメリットが非常に大きい

◆NPO法人化によって事務作業量が増大する

◆非営利型一般社団法人という選択肢もある

 さて、今回はNPO法人のメリット・デメリットをテーマにお話ししました。
 NPO法人の設立にあたっては、社会貢献やボランティア活動といった高い志を持った方が多いです。高齢者や障がい者の社会参加、母子家庭の支援など、非営利を旨としたNPO団体による社会貢献の重要性はますます高まっています。その一方で、増大した事務手続きが負担となってしまい、せっかく設立したNPO法人を解散するケースも全国で目立っています。

 弊所ではNPO法人設立にあたっての定款作成、所轄庁との相談、事務手続きはもちろんのこと、設立後の書類作成サポートまで幅広く承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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