飲食店や風俗営業を開始するときは、管轄の消防署にいくつか届出をしなければなりません。
消防署に提出する書類は複数ありますが、「防火対象物使用開始届」については提出を忘れると処罰対象となってしまう可能性があるので要注意です。また届出をした後には消防署の職員が来て「消防検査」を受けることになります。検査の結果、消防設備に問題が発見された場合は改善を指示されてしまいます。
そこで今回は、防火対象物使用開始届と消防検査をテーマにお話ししていこうと思います。
①そもそも防火対象物とは
消防法では火災予防のため、建築物などを「防火対象物」と定義しています。ざっくり言うと「消防署が効果的に防火行政を行うために作った考え方」です。
消防署は建築物一つ一つを検査しています。そして「その建物が何に使われているか」を個別に判定しています。そしてこの判定によっては、その建物に必要な消防設備が大きく変わってきます。場合によっては大掛かりな工事が必要となる場合もありますので、できればお店の賃貸借契約を結ぶ前に設置されている消防設備をチェックしておきたいです。
飲食店や風俗営業で必要になってくる消防設備はだいたいこんな感じです
◆ 消火設備(消火器、屋内消火栓等)
◆ 自動火災報知機(感知器、受信機、発信機、非常警報設備等)
◆ 誘導灯(避難口誘導灯、通路誘導灯、誘導標識等)
◆ 避難設備(避難はしご、緩降機等)
私の経験としては、だいたい消火器と自動火災報知機に設置基準違反や故障があります。また繁華街の雑居ビルでは避難設備が全く設置されていないケースも多いです。実際に、3階建ての雑居ビルに消火器が1本だけポツンと置かれていたケースに遭遇したこともあります。
②防火対象物使用開始届
防火対象物使用開始届は、建物やその一部を使用開始する際に、管轄の消防署に届け出る書類です。使用を開始する7日前までに提出するように定められています。
自治体によって若干異なりますが、防火対象物使用開始届を提出する際には「案内図」「配置図」「平面図」「立面図」「消防設備の設置図」などを添付書類として提出します。
防火対象物使用開始届を提出し忘れてしまうと罰則の対象です。しかし、すぐに罰せられるということは無いと思います。とはいえ意図的に提出をしなかったり内容を偽っていた場合は1億円以下の罰金、または3年以下の懲役が科せられますので、必ず提出しましょう。
③実地での検査
防火対象物使用開始届を提出すると消防署の職員が来て実地検査します。実際の建物と提出した書類に間違いがないかチェックされ、問題がなければ検査済証が交付されます。消防署のお墨付きをいただいて堂々と営業開始できますね。もし消防設備の設置に基準違反があった場合は、改善の指示を受けることになります。
改善の指示は「〇〇ヶ月後までに改善しなさい」というかたちで、ある程度の時間的猶予をみてもらえます。この指示書に基づいて「〇〇ヶ月後までに工事します」といった予定を消防署に提出しましょう。
消防設備の設置や修理は「消防設備士資格」を持った専門の業者に委託する必要があります。消火器1本だとしても、設置するには担当した消防設備士の名前を入れた「消防用設備等設置届出書」の提出が必要です。消火器なら安くて済みますが、自動火災報知機や避難器具の設置が必要になった場合、数十万円から百万円以上の工事費がかかることも珍しくありません。特にキャバクラやバーなどは窓が無かったり、小さかったりするので避難器具の設置に壁面工事が必要になることも。
高額な工事費が生じると、工事費を建物オーナーが負担するのか、それともテナント側が負担するのかで紛糾するケースがあります。事前に工事費に関する賃貸借契約を確認しておいたほうが良いですよ!
④まとめ
◆防火対象物使用開始届は7日前までに提出しましょう
◆実地検査で消防設備のチェックが入ります
◆消防設備の工事は専門業者へ依頼しましょう
◆契約前に消防設備をチェックしておくと安心です
飲食店や風俗営業を始める場合、内装やお店のレイアウトについては皆さん事前にしっかりと計画を建てていらっしゃるのですが、消防署関連については手つかずというケースはよくあります。いざ開店しようとしたら消防設備の設置不備で追加の工事が必要になったり、そもそも防火対象物使用開始届を提出していない等々。
店舗の経営と消防法は切っても切れない関係です。
弊所では消防設備の専門業者と提携しておりますので、風俗営業許可から消防設備の施工まで一貫して承っております。自分でやるには風営許可の取得が難しい、消防設備の設置工事が必要になった、そんな時はぜひお気軽にお問い合わせください。