宅建業免許の取得には、他の許認可と同様にいくつかの要件を満たしている必要があります。要件は主に3つに分類され、そのうち1つでも欠けていると免許申請が拒否されてしまいます。
3つの要件はそれぞれ人的要件、物的要件、財産的要件が規定されています。そこで今回は、宅建業免許に必要な3つの要件を順にお話ししていこうと思います。
①人的要件
◆専任の宅地建物取引士が必要
宅建業者が免許を受けるには、事務所などに一定数以上の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければなりません。(宅地建物取引業法第31条の3第1項)
宅地建物取引士は、1つの事務所に従事する者5名に1名以上の割合とされ、もし不足した場合は2週間以内に補充する等の措置が求められます。
気を付けていただきたいのは、「専任の宅地建物取引士」でなければならない点です。
①その事務所に常勤している
②専ら宅建業の業務に従事している
以上の2点を満たした宅地建物取引士を設置しなければなりません。そのため宅地建物取引士資格登録簿に勤務先名が登録されている場合は、要件を満たさないことになってしまいます。
法人が宅建業免許申請をする場合、監査役は専任の宅地建物取引士に就任することはできません。取締役が専任の宅地建物取引士を兼任することは可能です。
②物的要件
◆事務所設置が必要
宅建業免許申請が許可されるには、事務所の設置が必要です。この事務所というのは下記のようなものと考えられています。
継続的に事業を行うために、物理的にも社会通念上事務所と認識される程度の独立した形態を備えているもの
原則として戸建て住宅やマンションの一室を事務所とすることは認められません。また同一フロアに他の法人と同居している場合や、仮設の建物を事務所とすることも認められません。
個人が宅建業免許申請をする場合、自宅を事務所とすることができるかどうかは大きな関心事だと思います。原則としては自宅等を事務所とすることは認められていませんが、事務所スペースをしっかりと分けて独立性を持たせると、事務所使用が認められるケースがあります。
戸建て、マンション、賃貸住宅の事務所使用は自治体の判断によるところが大きいため、役所と相談しながら対策をとる必要があります。
◆支店を持つ法人の場合
宅建業法では事務所について「本店、支店その他の政令で定めるものをいう(第3条1項)」とされています。
支店が宅建業を行っている場合、本店は宅建業を行っていなかったとしても事務所とみなされます。そのため代表者や取引士をそれぞれ設置する必要がありますし、後述する営業保証金も収める必要があります。
経営上の負担を考えると、支店でのみ宅建業を行う場合は別会社を設立する方が安上がりです。一方で、本店でのみ宅建業を行い、支店では宅建業を行わない場合では、支店は事務所とみなされません。
③財産的要件
◆営業保証金の供託
宅地建物は総じて高額ですので、もし取引上の事故が発生した場合は消費者が被る損害は大変大きなものになります。そのため、取引で生じた債務を一定範囲で担保することを目的に作られたのが営業保証金の供託制度です。この制度により、取引で損害を生じた者は保証金から弁済を受けることが可能になります。
宅建業者は免許を登録した日から、3ヶ月以内に営業保証金の供託手続きと届け出を完了しなければなりません。もし間に合わなかった場合、国土交通大臣又は都道府県知事から催告があります。催告から1カ月以内に届出を行わないと、せっかく取得した免許が取り消されてしまうかも可能性があります。
供託所は一般的に管轄の法務局、または地方法務局の支局です。供託する金額は主たる事務所(本店)で1000万円、従たる事務所(支店等)で500万円です。従たる事務所は1か所につき500万円なので、事務所が多くなると多額の供託金が必要になります。
宅建業者が免許の有効期間を過ぎても更新しなかった場合や、なんらかのトラブルなどで免許の取消を受けた場合は、供託金の払い戻しを受けることができます。
いずれは取り戻せるとはいえ、供託金は高額なので全額支払うのは難しいことも多いです。そのため、供託金の支払いに換えて保証協会へ加入する方法が用意されています。
◆保証協会への加入
営業保証金を供託する方法でなく、保証協会へ加入する方法でも宅建業免許申請は可能です。
供託金の支払いに比べて、 保証協会への加入は開業時の必要経費を大きく下げることができます。特に開業当初は十分な資力がないのが一般的ですので、多くの宅建業者が保証協会への加入を選択しています。
保証協会への加入には弁済業務保証金分担金を支払う必要があります。分担金の金額は主たる事務所(本店)で60万円、従たる事務所(支店等)で1店につき30万円です。その他に加入金などが必要になりますので、手続き全体では170万円~200万円かかると思っていただくと良いでしょう。それでも供託金に比べて5分の1のコストでスタートできるので、メリットは大きいです。
④まとめ
◆専任の宅地建物取引士が必要
◆事務所設置が必要
◆住宅を事務所とするのは原則不可
◆営業保証金を供託する OR 保証協会に加入する
宅建業免許申請にはこのような要件クリアが求められます。また手続きにあたっては役所等とよく相談するのをおすすめします。もし手続きに不備があっては、せっかくの申請が通らなないかもしれません。
弊所では宅建業免許申請の代行だけでなく、法人設立、他の許認可申請も承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。