我が国は自由主義経済であり、基本的に物品の売買などは自由に行うことができます。しかし、何でもかんでも自由としていては個人の権利や取引の公正が危険にさらされるのも事実です。以前にご紹介した古物商許可制度は、窃盗犯罪などから個人や社会を防衛する為の法律的な防衛機構といえます。
そして、国民生活を支える宅地建物取引業もまた、免許制度が施行されています。そこで今回は、宅地建物取引業における宅建免許についてお話ししようと思います。
①宅地建物取引業法
衣食住は国民生活の基盤を形成します。この住とはすなわち住宅なのですが、この住宅取引に関して一般的な消費者は知識や経験に乏しいという現実があります。そのため詐欺まがいの売買を持ちかけるような悪質業者による被害が後を絶ちません。
そこで宅地建物取引業者については免許制度を実施し、取引の公正と取引業者の適正な業務を確保することになりました。これが宅地建物取引業法の目的です。
②宅建業と不動産業の違いって?
建物や土地の売買と聞くと、まず不動産業という単語が思い浮かぶかもしれません。この不動産業という表現は土地建物の売買や仲介、賃貸、管理など様々な業態を含んだ表現になります。それに対して、宅建業とは宅地建物の売買や仲介を取り扱う業態のことを指します。
言ってみれば、宅建業とは不動産業の一部であるということです。令和5年の不動産業者数は約35万社ありますが、そのうち宅建業免許をもった業者は約13万社ほど存在しています。ちなみに令和5年の主要コンビニエンスストア9チェーンの店舗数合計は、約5万8千店舗ですので、不動産業者がいかに多いか分かりますね。個人の大家さんが行うアパート経営から、全国展開する大手デベロッパーまで不動産業者の業態は様々です。
宅建業には宅地建物取引業法という明確なルールがあり、この法律に基づいて業務を行わなければなりません。それに対して不動産業には不動産法という法律はありません。そのためアパートの賃貸なら「借地借家法」、賃貸物件の管理なら「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」といった具合に個別の法律によって定められています。
③宅建業に該当する取引とは?
宅地建物取引業とされるのは以下のような行為が該当します。
◆自らが行う宅地や建物の売買や交換
◆売買、交換、賃貸借をするときの代理や媒介(仲介)
これらの取引を業として行う場合は免許が必要です。業として行うというのは①不特定多数の人を相手方として、②反復又は継続して行い、③社会通念上事業の遂行とみることができる程度行う場合です。以下に免許が必要な取引を図にしてみました。○印は免許が必要です。
この図にあるように、自己所有の物件を賃借する場合は免許を必要としませんが、他人所有の物件の賃借を媒介する場合は免許が必要です。例えばアパートの大家さんが自分の物件を賃借するなら免許は不要ですが、大家さんと入居希望者の賃貸借契約を媒介する場合は免許が必要になります。
④代理と媒介の違いとは?
物件を売買する、あるいは賃貸物件として貸し出すとき、多くの場合宅建業者が間に入ります。
不動産取引には法的な専門知識が必要ですし、さまざまな調査や書類作成を一般の人が行うのは難しいです。
また不動産を買いたい、アパートを借りたい、そういった人々を個人で探し出して契約まで締結するのは大きな負担となります。
そこで土地・建物の所有者と宅建業者の間で交わされるのが媒介契約、または代理契約です。
◆媒介契約
媒介契約での宅建業者は、売り手である物件所有者と買い手の間に立って契約成立のために尽力します。賃貸借の場合は貸主と借主の間に立ちます。
宅建業者の役割はあくまで契約成立のためのお膳立てなので、契約自体の締結は売り手と買い手が行います。
◆代理契約
代理契約が結ばれた場合、宅建業者は売主(貸主)から売買契約を直接締結する権利を与えられます。そのため宅建業者自身が買い手(借主)と契約を結ぶことになります。
媒介契約と代理契約は、宅建業者が契約締結の権利を有するか否かが大きな違いです。
一般的には媒介契約が結ばれますので、代理契約を結ぶケースは少ないです。代理契約を結ぶケースというのは、物件が遠隔地にあって所有者の行き来が困難な場合などです。
◆代理契約のコストは媒介契約の2倍
不動産取引の場合、宅建業者が報酬を受け取るのは契約が有効に成立した後になります。
この報酬とはいわゆる仲介手数料のことです。報酬は取引金額によって上限が定められていて、金額が大きくなれば仲介手数料も高額になります。そして代理契約の場合、報酬の上限が媒介契約の2倍とされています。
不動産は取引金額が非常に大きくなりますので、2倍の差があると言われたら媒介契約を選ぶ気持ちは良く分かりますよね。
⑤分譲には免許が必要
上記した通り、宅建業免許は不動産の売買を業として行うときに必要になります。そのため、引っ越しを理由に自己所有の不動産を売買するようなケースでは、わざわざ宅建業免許を取得する必要はありません。
一方で、建設会社が自ら土地を購入し、住宅を建築して売り出すケースでは宅建業免許が必要です。建売住宅は建設会社の所有物件ではありますが、業として売買を行うため宅建業法の適用を受けます。
建売での住宅販売を行うなら、事前に宅建業免許を取得しましょう。
⑥まとめ
◆不動産を業として売買するなら免許が必要
◆自己所有の物件を直接売買、賃借するなら免許はいらない
◆他者所有の不動産取引を仲介、代理するなら免許が必要
◆分譲販売を行うには免許が必要
弊所では宅建業免許申請の代行手続きを承っております。必要書類の収集、作成から役所への提出だけでなく、保証協会への加入手続きに関しても代行しております。また法人設立、建設業許可等の各種許認可申請も承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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