「合同会社」なんか聞いたことはあるけど良く分からない、という方も多いのではないでしょうか?今日は合同会社と株式会社との違い、メリット&デメリットを軽くご説明します。
①合同会社ってどんな会社? 株式会社との違いは? そのメリットについて
合同会社は米国のLLC(limited liability company 直訳:有限責任会社)に範をとって、2006年の会社法施行で制定されました。日本国内の全法人数の93.3%は株式会社が占めていますが、近年では合同会社の設立数が増加し続けており、2022年に設立された会社の約3割は合同会社となっています。
2006年の会社法施行によって会社設立に際しての資本金に関する制限が撤廃されました。改正前は株式会社で1000万円、有限会社で300万円の資本金が必要とされていました。しかし今日では極端な例として資本金1円で会社を設立することが可能です。これに伴って有限会社という制度は廃止されています。今も街中で有限会社●×という看板を見かけますが、これらの会社は会社法施行以前に開業している会社ですね。しかも資本金300万円の要件をクリアして設立されているのでちょっと信用も強いです。
さて、会社法施行によって株式会社の設立が容易になったのに、なぜ合同会社で設立されるケースが増えているのか?という疑問が出てきますよね。合同会社には株式会社と異なるいくつかのメリットがあるのです。
◆メリットその1:合同会社は所有と経営が一体である
株式会社は所有=株主、経営=株主に選任された取締役ですが、合同会社では所有=社員=経営です。意思決定が速いので柔軟な経営が可能です。
◆メリットその2:だいたい定款で決めればOK
株式会社は業務執行者として取締役、意思決定機関として株主総会を設置する必要がある、といった様々な決まりが法律で定められていますが、合同会社はそのほとんどを定款に委ねています。要するに好きに決めていいのです。
◆メリットその3:利益配分もご自由に
株式会社は株式の出資比率で利益の配分が決まりますが、合同会社の場合は出資比率に関係なく定款で自由に決められます。出資は多いけどあまり経営にあまり関わらない=配分少な目、出資は少ないけど多大な貢献をした=配分多目にしても構いません。
◆メリットその4:出資比率に関係なく社員の発言権は平等
出資者は社員(スタッフという意味ではないので注意です)と呼ばれ、出資額に関係なく代表権と業務執行権を持つので全員取締役になるのと同義です。ただ、全員の執行権が平等だと経営に混乱を生じる可能性があるので、定款で代表社員を定めることができます。
◆メリットその5:簡易迅速に設立可能で設立費用、維持費用も安い
株式会社は登録免許税が最小15万円ですが合同会社なら最小6万円です。他にも公証役場での定款認証手続き費用5万円が不要、決算公告のための官報掲載費用が不要など費用負担に差があります。株式会社の場合は公証役場での定款の認証、設立時取締役の選任と調査などを行いますが合同会社の場合はこれらの手間がかかりません。
②合同会社のデメリットは?
合同会社のメリットを上げましたが、当然デメリットも存在します。株式会社と比べてどのようなデメリットがあるのか簡単に見ていきましょう。
◆デメリットその1:株式会社に比べて知名度が低い
合同会社という営業形態の知名度は株式会社に比べて低いので、どうしても小規模なオーナー企業と思われてしまいがちです。そういった意味では職員の新規採用や取引の成立で足かせとなってしまうかも知れません。肩書についても代表社員と記載するのがピンとこないという声があります。代表取締役とは言えないのでCEO(最高経営責任者)と代表社員を併記する人が増えています。
◆デメリットその2:資金調達がしにくい
株式会社のように新規株式を発行して資金を調達することは当然できません。また株式会社に比べて知名度や信用面でやや劣るので、銀行や信用金庫から大規模な融資を得るのは難しいといわれます。主な資金調達は社債の発行、国や自治体の補助金、助成金が活用されています。
◆デメリットその3:上場できない
株式を発行しないので上場はできません。合同会社から株式会社への変更はできますが時間と手間、費用がかかるので将来的に上場を見据えるなら株式会社で設立するのをおすすめします。
◆デメリットその4:社員間の対立が経営に悪影響を及ぼすことがある
社員には平等な執行権と代表権があるので、対立してしまうと事業が停滞してしまう恐れがあります。定款に代表社員を記載してトラブルを未然に回避しましょう。
③合同会社に適した事業
会社設立に際して合同会社を選ぶのか、株式会社を選ぶのかはメリットとデメリットを比較して決めていくことになります。そこで合同会社の設立が向いている事業の例を挙げてみます。
◆会社の種類を前面に出さない事業
美容室や理容室、飲食店などの事業では株式会社な屋号を前面に押し出す訳ではないので合同会社が向いているといえます。
◆著名な人が代表者になる場合
作家、デザイナーなどが個人の名前を前面に出して事業をする場合は合同会社の信用の弱さが問題にならない事があります。
◆資産管理会社のように法人格があればよいだけの、節税を目的とした場合
◆個人事業主が法人化する場合
◆すでに信用力のある会社が子会社を立ち上げる場合
合同会社まとめ
このように合同会社には株式会社にはない多数のメリット、デメリットあります。会社設立にあたっては事業の性格、準備できる資本金、事業計画などをよく検討して決めていきましょう。
合同会社であっても定款は作成しなければなりません(会社法575号)。公証役場での認証は必要とされませんが、会社登記申請の際に必要となってきます。合同会社でも電子定款は認められていますので、ご自身で作成するのが難しいと感じたときは行政書士に相談すると良いでしょう。法律文書作成のプロたる行政書士なら、その他の相談も聞いてくれます。たとえば飲食店を営むなら飲食店営業許可申請が必要になりますし、補助金の申請書作成も行政書士の得意分野です。まとめて相談してしまうのが効率的ではないでしょうか。
行政書士 飯田法務事務所では定款作成から各種許認可申請、補助金申請に必要な事業計画書作成までサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。
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