飲食店を新しく開業する場合、様々な設備が必要になってきます。
店舗自体は賃貸借契約を結んで確保するケースが多いですが、家賃だけでなく敷金を支払う必要があります。礼金に関しては最近は無くなりつつありますが、依然として請求される物件が多数あります。
その他の必要設備として調理設備、店舗の外装と内装、さらに広告費などが発生してきます。
飲食店の初期費用がどの程度になるかは一概には言えませんが、日本政策金融公庫の2020年の統計によると、飲食店の開業資金の平均は989万円となっているようです。
新規開業するにあたって費用はできるだけ少なく抑えたいものですが、そんなニーズに応えるのが居抜き物件です。
そこで今回は居抜き物件をテーマにお話ししていきます。
①居抜き物件とは
飲食店を営業する場合、店舗についてはビルや建物のオーナーと賃貸借契約を結ぶことがほとんどです。
賃貸借契約の場合、借主が契約を解除する際には原状回復しなければなりません。
ここで問題になるのが、飲食店の経営者が廃業した場合です。単純に原状回復しようとした場合、店内に設置していた調理器具、内装、什器等を撤去し、解体しなければなりません。
解体工事や撤去には当然多額の工事費がかかりますので、それなら設備ごと次の入居者に売却してしまおうというのが居抜き物件です。
②居抜き物件のメリット
◆開業コストを抑えることができる
居抜き物件のメリットは何といっても開業費用を抑えることができる点です。
前の入居者が残した設備や内装を流用することができれば、大幅なコストカットが可能です。
新規開業に必要な経費の約40%は内外装費、約20%は調理機器費用と言われますので、その分のコストを削減して運転資金に回すことができます。
◆開店までの時間が短縮できる
居抜き物件は内装や設備が既に完成しているようなものなので、開業までの工事期間を短くすることができます。
もし一から工事を行う場合、業者の選定、内装の設計、調理器具の選定とやることは山盛りですが、居抜き物件ならこのような手間を丸ごと省くことができます。
③居抜き物件のデメリット
◆中古品のため耐用年数が短い
前の入居者が既に使用していた設備を流用するため、初っ端から中古品ばかりとなります。当然ですが故障しやすいですし、買い替えが必要になることもあります。
◆内装や設備にこだわると物件がなかなか見つからない
自分の持っている店舗のイメージ通りの物件というのはそうそうありません。ある程度のところで妥協して契約を結んで、必要な部分について工事を行う等の対策が必要になります。
理想の設備や内装を求めるなら、居抜き物件はかえって手間になってしまうかも知れません。
④居抜き物件ならではの法的問題
さて、ここまで説明したのは主に不動産側から見た居抜き物件の特徴でした。
ここでは居抜き物件の法的な注意点も軽く説明していこうと思います。
◆賃貸借契約をしっかりと把握しておこう
居抜き物件の設備や内装は【造作】と呼ばれます。造作は前の入居者と新しい入居者の間で売買契約や譲渡契約を結ぶことになります。
ここで気を付けていただきたいのが、テナントの賃貸借契約に譲渡禁止の定めがあるかどうかです。もし譲渡禁止の定めがあった場合、テナントの借主だけで話を進めることが難しくなってきますので、テナントのオーナー(貸主)や不動産屋の了解を得なければなりません。賃貸借契約書の内容を改めてチェックし、必要に応じてオーナー等も交えた交渉を行っていきましょう。
◆造作に関して契約書を作成しよう
売却にしろ譲渡にしろ、受け取ってすぐに終わりにするのはお勧めできません。きちんと造作売買契約書や造作譲渡契約書などを作成しましょう。契約書があれば後からトラブルに巻き込まれずに済みます。
店内に残っている造作について、新しい借主に譲渡するのか、売却するのか、売却する場合の価格はどうするのか、どんな造作を譲渡又は売却したのか、不測の事態が生じた場合の契約解除はどうするのか、盛り込むべき内容は様々です。
契約書の作成が難しい場合は、専門家に依頼することをお勧めします。契約書の作成は行政書士、弁護士、司法書士などが請け負っています。もちろん弊所でも承っています。
◆リース品がないかチェックしよう
造作の中にリース品があった場合、その造作の所有権は前の借主ではありません。もし引き続きリース品を使用するなら契約の変更が必要になりますし、使わない場合はきちんと契約を解除し、清算しておかなければなりません。
後からリース品だったことが判明してしまい、契約解除しようにも前の借主が行方不明で連絡がつかない、なんてことの無いようにしましょう。
⑤居抜き物件は飲食店営業許可が取りやすい?
居抜き物件は前の借主が営業許可を取得していることが多いですので、概ね飲食店営業許可の取得はしやすいと言えるでしょう。
ですが、必ずしもそのまま営業許可が取得できるかというとそうではありません。
内装が変わっていると施設基準を満たさない可能性がありますし、前の店舗の業態と新しい店舗の業態が異なっていれば、当然確認すべき点も変わってきます。
確かに居抜き物件は許可を取得しやすいですが、許可基準についてのチェックは必ずしておきましょう。
⑥まとめ
◆居抜き物件は廃業した店舗の造作を引き継いで開業できる
◆開業資金が少なくて済むが、妥協が必要なこともある
◆造作の譲渡と売買は必ず契約書作成しよう
◆飲食店営業許可は取得しやすいがチェックは必要
居抜き物件は新たに飲食店を開業したい人にとっては大変魅力的な物件です。
ですが、居抜き物件ならではの注意点というものがあります。
特に契約書については必ず作成しておきましょう。後からトラブルになっても契約書があれば解決の糸口になります。
契約書についてはできるだけ専門家に依頼して作成するのがお勧めです。一旦自分で作った契約書を、行政書士や弁護士にチェックしてもらう方法でも良いでしょう。専門家なら契約書の問題点を見つけて修正してくれます。
弊所では飲食店の営業許可だけでなく、風俗営業許可申請、深夜酒類提供飲食店営業届、契約書作成などをお手伝いしております。
初回相談は無料で承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。