近年、話題になることの増えてきた遺言書作成。市民ホールや文化会館などで終活セミナーが開催されると、入場者で満員になることもあるそうです。
話題として聞いてはいるけど、いまいち良く分からないから手を出していない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回のテーマは遺言書作成。作る際にココは注意、こんなケースでは作っておきたい、そんなお話をしようと思います。
まずはどんな遺言の仕方があるのかをチェックしましょう。遺言書には主に2種類があります。それが自筆証書遺言と公正証書遺言です。
①自筆証書遺言とは
遺言者本人が全文・日付・氏名を自筆で書き、捺印して作成します。必ず自筆で書かなければならず、代筆は認められません。縦書き・横書きは自由で用紙も自由です。
◆メリット
・費用がほとんどかかりませんので、手軽に書くことができます。
・遺言を作成したこと及びその内容について他の人に知られないようにできます。
◆デメリット
・遺言の実現が不確実です。
・遺言書を見つけた遺族は、家庭裁判所に検認の申し立てが必要です。検認を受けないと様々な手続きにおいて遺言書が有効となりません。
・検認を受けないで遺言を執行すると5万円の過料が科されます。
・専門家のチェックがされていないので、書き方や方式に不備があると無効になります。
・財産目録はワープロやPCで作成できますが、他は全て自筆で書かなければなりません。書き間違えたときの訂正方法まで全て指定されています。高齢者には大変な作業です。
②公正証書遺言とは
遺言者が公証役場に出向き、証人2人の立会いのもとで作成します。出張費を払えば公証人に出張してもらうことができるので、病室等でも作成可能です。証人については行政書士などの専門職に依頼することが可能です。行政書士、公証人ともに守秘義務があるので内容が外部に漏れることはありません。
◆メリット
・公証人があらかじめ方式や内容の実現性をチェックしてくれます。確実な遺言を残すことが可能です。
・公証人が遺言者の遺言能力(認知症などを患っていないか?)をチェックするので、後になって争いになりずらいです。
・開封時に家庭裁判所の検認は不要です。手間と費用が節約できますし、相続発生後すぐに遺言の執行が可能です。
・遺産分割協議が不要になります。遺言書記載の通りに手続きがスタートします。
・原本が公証人役場に保管されるので万一の紛失や改ざんの心配がなく再発行も可能です。
◆デメリット
・公証人手数料がかかる。
・作り直しにもコストがかかる。
③おすすめは公正証書遺言
ではどちらの様式で遺言書を作るのが良いか、と聞かれたなら私は公正証書遺言をおすすめします。
原本が公証人役場に保管されるので、せっかく書いた遺言書が誰の目にも止まらずに忘れられることは絶対にありません。引っ越しのドタバタで間違って捨ててしまうこともないです。
内容についても公証人のチェックを受けられますので、書き方が間違ってて無効になるリスクがありません。
手数料と公証役場に出向く手間を考えても、公正証書遺言のほうがメリットが大きいと言えるでしょう。
④遺言書を作成しておきたいのはこんな時
◆遺産相続の争いは避けたい
たとえ口頭で相続分の約束をしていたとしても、言った言わないの水掛け論になってしまう可能性があります。遺言書があれば遺言者の意思がきちんと反映されます。
◆相続手続きにかかる負担を減らしてあげたい
遺言書に遺言執行者の指定をしておけば、手続きを執行者に任せてしまうことができます。
◆夫婦の間に子供がいない
子供がおらず、両親も他界していた場合、法定相続人は被相続人の兄弟姉妹まで広がっていきます。すべての遺産を配偶者に相続したいなら遺言書を作ると良いです。
◆配偶者以外との間に子がいる
離婚した前妻との間に子がいて、今の配偶者との間にも子がいるような場合です。前妻との子、今の配偶者との子どちらにも相続権がありますが、普段は疎遠なほぼ他人同士です。遺産相続争いを回避するためにも遺言書を用意しておきましょう。
◆自分の介護や世話を親身になってしてくれた息子のお嫁さん、孫などに相続したい
法定相続人以外に相続するには遺言書が必須です。子の配偶者、孫などは法定相続人に含まれないので遺産分割協議に参加することもできません。遺言書を作っておけば感謝の気持ちを伝えることができます。
◆相続人同士が不仲である、または行方不明者がいる
遺産分割協議は全員参加が原則です。不仲であったり行方不明者がいると分割協議自体がストップしてしまう可能性があります。
⑤専門家に相談しましょう
さて、遺言の方式と用意しておきたいケースをご紹介してきましたが、遺言書の内容を1から全て自分で決めていくのはなかなか大変です。今回は言及しませんでしたが、遺留分のチェックや遺言執行者の選定など法律の専門家でないと分かりにくいことも多いです。
専門家に相談してアドバイスを受けながら原案を作成し、そのうえで公証人のチェックも受ければ万全の遺言書を作成することができます。
私たち行政書士は法律文書作成のプロフェッショナルとして、原案の作成から公証人とのやり取りまでサポートすることができます。
遺言書作成に興味はあるけど、自分で作るのはちょっと…そんな時はぜひご相談ください。
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