以前、相続人はどうやって決まるのかを説明したことがありましたが、その際には説明しなかった相続欠格・廃除・代襲相続が今回のテーマです。特に代襲相続はよくあるケースなので把握しておくと便利ですよ。
①相続欠格・廃除
◆相続欠格とは?
もし相続人となるべき人が、遺産相続を巡って犯罪を犯してしまったら…
そんな人に相続させるのはさすがに認められないですよね。相続欠格とは「コレをやったら相続人の資格を奪います」という制度で、被相続人が手続きする必要はありません。
そうそうある事ではない、というかあってはいけないのが相続欠格で、内容をみるとサスペンスドラマのような状況が想定されています。
①故意に被相続人又は他の相続人を殺害し、又は殺害しようとしたために刑に処された人
②被相続人が殺害されたことを知っていたのに告発も告訴もしなかった人
③詐欺又は強迫によって、被相続人に遺言を書かせたり変更させた人
④相続に関する遺言書を偽造したり隠したり捨てた人
さすがに犯罪行為で財産を得ようとするのは問題外ということです。相続開始後にこのような犯罪行為を犯した場合は、相続開始時にさかのぼって相続権が消滅します。もし相続した財産があった場合は返還しなければなりませんし、遺産分割協議がやり直しになります。
◆廃除とは?
相続欠格ほど悪質ではないけれど、被相続人が「この人に相続させたくない」と思った場合に、その人の相続人たる資格を奪う制度です。相続欠格は被相続人の意思に関係なく相続権を奪う制度ですが、廃除は被相続人が自分の意思で手続きする必要があります。
廃除が認められるような事由とは以下のようなものです。
①被相続人に対する虐待
②被相続人に対する重大な侮辱
③その他の著しい非行
被相続人の意思を尊重する制度ですが、「お前に遺産はやらん!」と宣言するだけでは廃除できません。
被相続人が存命であれば家庭裁判所へ推定相続人廃除の審判申立書を提出して審判を受けることになります。相続人の死後に提出することも可能ですが、その場合は遺言書に記載して遺言執行者を指定する必要があります。
さて、裁判所に申し立てたら廃除は認められるの?という点ですが、なかなか裁判所は廃除を認めてくれないようです。相続は非常に重要な権利でもあるので、裁判所はとても厳格に審査しています。
令和2年度の家庭裁判所の資料によると、相続廃除の認容(ようするに許可)は13.8%でした。かなりの狭き門です。ちなみに一度廃除が認容されても、裁判所に申し立てて廃除を取り消すことは可能です。
廃除ができないなら遺言で「びた一文やらん」と書けば良いかと思いきや、遺留分侵害額請求権があるのでそれも難しいというのが現状です。今の法制度では相続人に一切相続させないというのはそうそう簡単な事ではないのですね。遺留分侵害額請求権については改めてしっかり説明します。
②代襲相続
◆代襲相続とは?
相続欠格や廃除はあまりある事ではないのですが、代襲相続に該当するケースはよく目にします。
代襲相続とは、相続開始よりも前に相続人となるべき子、又は兄弟姉妹がすでに死亡していた場合、その者の直系卑属(その者の後の世代を卑属といいます)が代わりに相続人となる制度です。
例えば被相続人に配偶者がいて、子は既に交通事故で死亡しているけれど孫は元気だ、という場合に代襲相続が発生します。この場合だと孫と配偶者が相続人となります。孫の相続順位は死亡してしまった子と同じ扱いになるので、相続割合は下記のようになります。
孫1/2・配偶者1/2
◆代襲相続の注意点
代襲相続は兄弟姉妹にも認められますが、兄弟姉妹の代襲相続はその子供(甥・姪)までしか認められません。無制限に認めてしまうと相続が複雑になりすぎるのが理由です。
また、代襲相続は相続開始以前に死亡・相続欠格・廃除があった場合にのみ認められます。
ここで気を付けておきたいのは子が相続放棄した場合、孫以下の直系卑属に代襲相続はできないという点です。もし相続放棄を考えている場合は、代襲相続が発生しないことを念頭に置いて決断しましょう。
まとめ
◆相続欠格と相続廃除は犯罪や虐待があったときに生じる
◆代襲相続は相続人が既に死亡しているとき、その子供や孫が相続人になる
相続人の定めができたら、次に待っているのは財産調査に遺産分割協議です。
その他、役所への書類提出に名義変更とやることが多いので、自分だけでは難しいと感じたら専門家に相談しましょう。
行政書士は書類の作成から提出、名義変更、遺産分割協議書作成まで様々なお手伝いができます。ぜひお気軽に街の法律屋さんである行政書士にご相談ください。
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