会社を設立する際は定款を作成して事業年度を決定しなければなりません。
事業年度と聞くと4月始めの3月締めを想像するかもしれませんが、会社を設立する場合は事業年度を自由に設定することができます。
では自社の事業年度は何を基準に決めていくべきか?をテーマに今日はお話ししようと思います。
①国や地方公共団体など公的機関は4月始めの3月締め
国や地方公共団体は4月初めの3月締めが採用されていますが、これは法律に定められているからです。国は財政法第11条で、地方公共団体は地方自治法第208条に定められていますね。
4月初めの3月締めの歴史をさかのぼると明治22年(1889年)の会計法制定にたどり着きます。当時の覇権国だった英国にあわせたとか、農家の収穫にあわせたとか所説あるようです。
役所が4月初めの3月締めなので、大手の企業を中心に同じく4月初めの3月締めを採用している会社は多いですが、もちろんそれなりの理由があって設定しています。一方で中小企業は自由に設定していることが多いです。
②大手企業が公的機関と同じ事業年度を設定する理由
◆公的機関と取引する場合は事業年度を合わせると都合がいい
取引相手となる公的機関の予算編成や事業執行に合わせるほうが、自社の都合もつけやすいという理由で事業年度を役所に合わせることが多いです。取引相手に公的機関が予定されているなら、事業年度は4月初めの3月締めが楽になるでしょう。
◆国の税制改正や制度変更に対応しやすい
国の法改正等は4月1日付で施行されることが多いですので、法改正と同時に事業年度をスタートするメリットはあります。年度途中で法律が変わってしまうと計算が複雑になって余計な手間になりますよね。ならいっそ4月1日を新事業年度のスタートにしてしまいましょう。
◆大学や高校の新卒採用に合わせる
公的教育機関も当然役所と同じ事業年度が採用されているので、3月に卒業して4月から新生活スタート、という新卒社会人がほとんどです。毎年ある程度の新卒社員を採用するなら、人事手続き等の手間を考えると事業年度を合わせてしまう価値はあります。
実際に公表されている国税庁の統計によると、資本金100億円を超えるような大企業では3月締めが75%前後と圧倒的に多いです。そのため多くの大企業で株主総会が6月に集中することになるのですね。
では中小企業を含めるとどうなのか?といいますと、国税庁の統計では3月締めは約20%と一気に少なくなります。
③事業年度は何を基準に決めるべき?
大企業に比べて中所企業の3月締め決算が少ないのには理由があります。自社の事情を考慮して決めていきましょう。
◆繁忙期と決算月が重ならないようにしよう
業種ごとに繁忙期というのは変わってきます。たとえば建設業なら役所の工事が集中する年末~3月まで、飲食業なら忘年会シーズンと3~4月の歓送迎会シーズン、小売業なら年末セールの12月、海外との取引が多い場合は相手国の決算月に左右されることもあります。ちなみに米国は10月始めの9月締めです。
ただでさえ忙しい繁忙期に決算月が重なってしまうと目も当てられません。特に事務員の数が少ない中小企業では仕事が回らなくなってしまうので、繁忙期は絶対に避けて事業年度を設定するべきです。目安としては決算月以降~申告月までの2ヶ月間は避けるべきです。
◆消費税の免税期間を有効活用しよう
資本金1000万円未満で会社を設立した場合、消費税が最初の2期は免除となります。
ここで気を付けていただきたいのは、2期=2年というわけではない点です。つまり最初の1期目をできるだけ1年に近づけた方が、免税期間を長くとれるメリットあるということです。
※例 A社
2018年10月6日設立 事業年度4月1日~3月31日
1期目:約6ヶ月(2018年10月6日~2019年3月31日)
2期目:1年(2019年4月1日~2020年3月31日)
免税期間=約6ヶ月+1年
※例 B社
2018年10月6日設立 事業年度10月1日~9月30日
1期目:約1年(2018年10月6日~2019年9月30日)
2期目:1年(2019年10月1日~2020年9月30日)
免税期間=約1年+1年
同年同日に設立したにもかかわらず、B社は半年長い免税期間が得られることになります。
③まとめ
事業年度の設定は自由ですが、だからといって全く適当に決めてしまうと後になって面倒が生じる可能性がありますし、免税期間で損をするかもしれません。
自社の取引相手に合わせる、繁忙期は避ける、毎年固定的に大きな資金の支出が予想される時期は避ける、といった工夫が必要です。
弊所では会社設立にかかる多数の手続きや書類の作成をお手伝いしております。不明な点、気になる点がある場合はぜひお気軽にご相談ください。誠心誠意お手伝いさせていただきます。
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