自分の財産を希望通りに相続するなら、遺言書を作成するのが一番良い方法です。遺言書がある場合は遺産分割協議をすることなく相続手続きを行うことが可能ですので、相続人が複数いて遺産分割協議が紛糾しそうなケースでは、スムーズな手続きのためにも事前に遺言書を作成しておくと安心です。
以前、遺言書は主に自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があることをテーマにお話ししましたが、今回は公正証書遺言について一歩踏み込んだお話しをしようと思います。
①公正証書遺言とは
公正証書遺言の作成は、公証人役場の公証人によって作成されます。
遺言者は公証人役場へ行って公証人に遺言の内容を口頭で伝え、公証人は遺言の内容が遺言者の真意であることを確認したうえで文章にしていきます。
公証人は出来上がった文章を遺言者と証人2人に読み聞かせ、または閲覧させて、間違いが無い事を確認してから遺言公正証書を作成します。
◆公正証書遺言のメリット
・なんといっても証拠能力が高いことです。作成にあたって公証人が書き方や内容の実現可能性をチェックしてくれますので、確実に遺言を残すことができます。
・作成のときに公証人が遺言者の遺言能力をチェックしてくれますから、後になって「認知症だったから無効だ!」等の主張をされるトラブルを回避できます。
・家庭裁判所での検認が必要ありません。一方で自筆証書遺言の場合は検認が必要です。家庭裁判所に検認の申し立てをして、平日の昼間に集まって検認を受け、検認済み証明書を取得しなければなりません。この手続きには約1ヶ月かかるので、相続人の負担となってしまいます。
・遺産分割協議が不要になります。自筆証書遺言、公正証書遺言のどちらであっても、有効な遺言書があれば遺産分割協議をすることなく相続手続を開始できます。
・遺言書の原本が公証人役場に保管されるため、万一正本や謄本を紛失したとしても再発行してもらうことが可能です。自宅で保管することの多い自筆証書遺言の場合、紛失や改ざんを受けるおそれがありますが、公正証書遺言にはそのようなリスクがありません。
②公正証書遺言に必要な書類
公正証書遺言をする場合、公証人役場へ様々な書類を提出しなければなりません。遺言内容のメモを用意するのはもちろんですが、その他は役所から取り寄せる必要のある書類が多いです。
・遺言者の現在の戸籍と原戸籍
・遺言者の印鑑登録証明書又は運転免許証・マイナンバーカード・パスポートなどの官公署が発行した顔写真付き身分証明書
・相続を受ける人の現在戸籍
・相続人以外の人に遺贈する場合は、遺贈を受ける人の住民票
・不動産を相続する場合は登記簿謄本
・固定資産税納税通知書又は固定資産評価証明書
・銀行の貯金を相続する場合は預貯金通帳のコピー
・会社経営者の場合は取引残高報告書などの貸付金、借入金を確認できる書類等
・証人2人の確認資料(印鑑証明や身分証明書など)
③公正証書遺言の作成手順
①公証人へ遺言書の相談と作成を依頼
遺言書の作成や相談については原則予約制となっている公証人役場が多いですので、予約なしで行った場合は待ち時間が長くなるかもしれません。
②相続内容のメモ&必要書類を収集して提出
何を誰に相続するか、相続の割合をどうするか等をメモにして提出します。
役所に行って戸籍、住民票等を取得します。不動産がある場合には法務局で登記簿謄本を取得しましょう。その他には固定資産税納税通知書か固定資産評価証明書のどちらかが必要になります。
必要な書類を全て揃えたら、公証人役場に提出します。提出方法はメール、郵送のほか直接持参してもかまいません。
③公証人が遺言書の案を作成
メモや提出書類に基づいて公証人が遺言書の原案を作成してくれます。メール等で確認の依頼がきますので、ご自身の希望通りになっているかチェックして、場合によっては修正を依頼します。
④公正証書遺言を作成する日時を決定
公証人と打ち合わせを行ったうえで、遺言者が公証人役場に行って実際に公正証書遺言を作成する日時を決定します。もし遺言者が病気等の理由で公証人役場に行くことができない場合は、公証人に出張を依頼することが可能です。出張費は別に発生しますが、病院や老人ホームに来てもらうことができます。
⑤証人2人と共に公証人役場で手続き
証人2人の前で、遺言者本人が公証人に遺言の内容を口授します。公証人が遺言者の判断能力に問題がないことを確認したら、遺言書の原本の内容について遺言者、証人2人に最終確認します。
内容に問題がなければ、遺言者と証人2人が原本に署名・押印します。最後に公証人が署名押印して完成です。
◆法律専門職に遺言書の作成支援を依頼した場合
行政書士や弁護士、司法書士などの法律専門職に遺言書作成を依頼すると、必要書類の収集、原案の作成、公証人役場との調整などを全て代行してもらえます。
また公正証書遺言では2人の証人が必要になりますが、専門職は証人となってくれますので人数をそろえるのが簡単になります。どうしても証人が揃えられない場合、公証人役場か依頼を受けた専門職が追加で手配してくれますので安心してください。
※以下の人は証人になれません
・未成年者
・推定相続人
・遺贈を受ける者
・推定相続人および遺贈を受ける者の配偶者および直系血族等
④公証役場への手数料
公正証書遺言を作成する場合、公証人役場へ手数料を支払わなければなりません。手数料は遺言する財産の価格に応じて決まっていますので、下記を参考にしてください。
※公証人手数料の注意点
・財産の相続を受ける人ごとにその財産の価格に応じた手数料を支払います。相続する人数が多くなると、それぞれの手数料が合算されるため高額になります
・全体の相続財産が1億円以下だった場合、算出された手数料に11000円が加算されます(遺言加算)
・公証人に病院や老人ホームまで出張してもらった場合、日当や交通費が加算されます
⑤まとめ
◆公正証書遺言は公証人役場で作成する
◆自筆証書遺言と違って必要書類を集める必要がある
◆公証人と打ち合わせつつ遺言書の原案作成
◆2人の証人と共に公証人役場へ行く必要がある
◆手数料がかかる
◆法律専門職に作成依頼すると手続きが楽になる
公正証書遺言は自分で公証人役場へ行って作成することが可能です。ですが、書類の収集や原案の作成といった遺言書作成に関する事だけでなく、証人の手配や相続発生後の手続き、遺言執行者の選出など、後々のことを考えると専門家に依頼するのがおすすめです。
遺言書作成段階から関わっている専門家がいれば、いざ相続が発生した際もスムーズに手続きを進めてくれます。
弊所では遺言書作成から相続の手続き、最終的な名義変更に至るまで幅広くサポートしております。
初回相談は無料で承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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