株式会社を設立する場合、必ず設置しなければならないのが株主総会と取締役です。その他にも監査役、監査役会、会計監査人、会計参与などなど、実にややこしくて複雑ですよね。
というわけで今回のテーマは機関設計。実際に設立されている主な設計パターンをメインにお話ししていきます。
①公開会社と非公開会社
株式会社の機関設計を説明する前に、大前提として公開会社と非公開会社について説明しておきますね。
発行する株式に譲渡制限を設けているか、設けていないかによって分かれます。
一株でも譲渡制限のない株式がある場合、公開会社となります。
公開会社と非公開会社では機関設計の条件が異なってきます。特に大きな違いとして公開会社では取締役会を必ず設置しなければなりませんが、非公開会社では任意ですので置かなくてもかまいません。公開会社の場合、株式が自由に譲渡されるので株主が頻繁に変わる可能性があります。ですので会社の意思決定は取締役に委ねられることになりますが、合議制にすることで株主の利益を保護しようというわけです。
②機関設計の9つのルール
① | すべての株式会社には、株主総会と取締役とが必要 |
② | 公開会社では取締役会が必要 |
③ | 取締役会を設置した場合には、監査役(監査役会)、監査等委員会または指名委員会等・執行役のいずれかが必要 ただし大会社以外の非公開会社において会計参与を設置した場合はこの限りでない |
④ | 監査役(監査役会)と監査等委員会又は指名委員会等・執行役は、どちらかしか設置できない |
⑤ | 大会社では、会計監査人が必要 |
⑥ | 取締役会を設置しない場合は、監査役会、監査等委員会、指名委員会等・執行役を設置することができない |
⑦ | 会計監査人を設置するためには、監査役(監査役会)、監査等委員会、指名委員会等・執行役(大会社かつ公開会社では監査役会、監査等委員会、指名委員会等・執行役のいずれか)が必要 |
⑧ | 会計監査人を設置しない場合は、監査等委員会、指名委員会等・執行役を設置することができない |
⑨ | 指名委員会等・執行役を設置した場合は、監査等委員会を設置することができない |
長々と書きましたが、このルールのほとんどは大会社か公開会社が対象になっています。大会社とは資本金が5億円以上又は負債総額が200億円以上の会社のことなので、上場企業や有名な会社が該当します。
中小企業の多くは親族経営や一人会社等ですので、非公開会社がほとんどです。①と③を覚えておけば十分ですよ。
③非公開会社を選択するメリット
非公開会社を選択した場合、なんといっても取締役会を設置するかどうか選択できます。
取締役会は3人以上の取締役を選出して代表取締役を選任しなければなりませんが、非公開会社なら取締役1人だけで会社を設立することができます。
また取締役の任期は原則2年ですが、非公開会社であれば10年とすることができます。取締役を選任したらその度に登記しなければなりませんので、2年にしてしまうと手続きが煩雑で手数料もかかります。中小企業の非公開会社なら任期10年がおすすめです。
また一定の条件を満たした非公開会社では監査役を設置する必要がありません。
・取締役会を設置していない
・取締役会は設置したが会計参与を設置している
非公開会社の最もシンプルな機関設計は「取締役+株主総会」というパターンです。ですが今後の取引や銀行から融資を受ける可能性を考慮すると、監査役か会計参与を設置するのが好ましいと言えます。
監査役の選出は取締役と同じなので株主総会の決議によります。必要な資格は特にありませんので信頼できる人物に監査役を任せましょう。
会計参与は公認会計士、監査法人、税理士、もしくは税理士法人でなければなりません。会社内部に専門家を設置して、会社の計算書類を作成させることになるので信用上でプラスになります。
監査役は取締役の業務執行をチェックして、取締役の暴走を防ぐことが目的です。会計参与は数字のプロフェッショナルですので、監査役と会計参与がいる会社はその分信用できるよねとアピールできます。
④非公開会社(大会社でない)の主な機関設計
株主総会 | 取締役 | 取締役会 | 監査役 | 会計参与 | |
① | 〇 | 〇 | |||
② | 〇 | 〇 | 〇 | ||
③ | 〇 | 〇 | 〇 | ||
④ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
⑤ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
⑥ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
⑦ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
機関設計は自由に設定することができますので、会社設立後に手数料を払って機関を変更することも可能です。設立直後はシンプルな①、②のパターンを選択して、事業が大きくなってきたら⑤~⑦に変更するのも手です。
⑤まとめ
一見すると複雑な会社の機関設計ですが、会社の多くを占める中小企業では非公開会社が主流です。非公開会社であれば機関設計はずっとシンプルなものになりますので、会社設立にあたっては非公開会社で設立するのがおすすめです。株式会社と合同会社、どちらを選ぶべきかについては以前に軽く説明していますので、そちらもご覧になってくださいね。
弊所では会社設立に必要な定款の作成から、公証役場への届け出や機関設計のアドバイスまで承っています。ぜひお気軽にご相談ください。誠心誠意お手伝いさせていただきます。
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