企業のホームページを見ると、企業概要などのページで資本金というものを目にすると思います。資本金は会社を設立するにあたって必ず定める必要があるので、世の中の株式会社、合同会社といった会社には全て資本金が設定されています(一般社団法人やNPO法人は除きます)。
会社法が改正された2006年からは資本金1円での会社設立が可能になりましたが、実際1円で起業するのってどうなの?と思われる方もいますよね。そこで今回のテーマは資本金です。
①そもそも資本金とは?
まずは資本金とはいったい何なのか?という点から確認していきましょう。
◆資本金は会社がビジネスをするための開業資金
会社がビジネスを展開するにはどうしたってお金が必要です。資本金とは会社がスタートする際に使うことができる最初期の資金といえます。業種や業態によって必要な初期資金は大きく差がありますので、会社を設立する場合には初期資金がいくら必要になるのかを検討して資本金を設定します。特に飲食業の場合は調理器具の購入や店内の内装費など、数百万円の初期資金が必要になってきます。
資本金は主に発起人(会社を設立する人)が持っていた資金と、投資家からのお金の2通りがあります。1人で会社を設立する場合等は発起人が自分の貯金を資本金としてスタートすることが多いです。もちろん投資家や株主から出資を受けることができれば、多額の資本金を確保して事業をスタートできますが、実際に会社を設立する際に第三者から出資を受けられることは稀です。
◆資本金は増えたり減ったりしない
資本金は会社の開業資金のことですので、会社が事業によって利益を出したり損益を出したりしても、増減は生じません。ですのでホームページなどに掲載される資本金はいつ見ても同じになります。あくまで開業資金である資本金と現在の会社の収益は分けて考えてください。
②資本金は多い方が良い
◆資本金は信用のバロメーター
資本金は多い方が良いと言えます。なぜなら資本金が十分にある会社なら取引も安心ですし、将来的に事業が拡大していく期待が持てるからです。また発起人の出資だけでなく、投資家や株主からの出資金が多いということは、それだけ会社のサポーターがいるようなものですので対外的な信用はより高まります。
◆事業が軌道に乗るまでの運転資金
起業直後から順調に仕事を受注して売り上げが出せるなら、資本金が少なくても大丈夫かもしれませんがそう簡単にはいきません。最初の3ヶ月はほぼ収入が無い、なんてのはよくある事ですので、最低でも3ヶ月は利益が出なくても操業できる資金を確保しましょう。
◆人材の採用がスムーズになる
終身雇用の崩壊が叫ばれて久しい昨今、転職活動時に企業のホームページで資本金を調べるのが当然の流れになっています。特に起業から間もない会社では大きな実績がありませんので、会社を信用してもらって採用に応じてくれる人材を集めるには、資本金をアピールポイントにするのも良いですね。
③資本金の基準は300万円
ある程度の資本金を用意して会社を設立するのがベターですが、ではいったい何円を基準に考えるのが良いかといいますと、300万円を一つの基準として考えるのが一般的です。
2006年の会社法改正以前は、株式会社の設立には1000万円、有限会社なら300万円の最低資本金が必要でした。今もこの300万円が会社に対する信用の基準とみなされるケースが多いです。
より会社を設立しやすいように、という国の意向によって現在では1円以上の資本金があれば株式会社を設立できるようになりましたが、実際に設立された会社の資本金は中小企業の場合100万円~800万円で設定していることが多いです。資本金1円というのも制度上は可能ですが、デメリットが多いため採用する会社はほぼありません。
④資本金1円のデメリット
◆融資が受けられない
資本金1円の会社では金融機関からの融資がまず受けられません。銀行などは融資の際にしっかりと審査しますので、ほぼ間違いなく弾かれてしまいます。そのうえ法人口座の開設すらできません。
◆新規取引に悪影響
資本金が極端に少ない場合、信用の低さから法人相手の新規取引に悪影響があります。債権回収ができないリスクがあると思われてしまっては、せっかくまとまりそうだった商談が破談になるかもしれません。
◆許認可申請ができない
業種によっては国や都道府県に許認可の申請をしなければなりません。その際、業種によっては資産要件が定められているものがある事に注意してください。例えば建設業では500万円の資金が無ければ許可が下りませんし、第一種貨物利用運送事業では300万円、貸金業登録は5000万円もの資金要件が定められています。
⑤資本金1000万円未満なら消費税が2期免除
以前にお話しした、事業年度の決め方でも触れましたが、資本金1000万円未満であれば消費税が2期免除されます。起業直後は資金繰りに苦労する時期でもありますので、消費税免除は大きなメリットになります。
対外的な信用を確保しつつ、消費税免除のメリットを得るなら300万円以上~1000万円未満の資本金を用意するのが効率的です。
一方で資本金が少なくても問題ない場合があります。例えばミュージシャンやデザイナー、イラストレーターといったクリエイティブな職種の方が会社を設立する場合、資本金は少額でも良いでしょう。取引相手はその人の技術や実績そのものを信用していますので、資本金なんて気しないわけですね。
⑥まとめ
◆資本金1円はデメリットが多すぎる
◆融資を受けるなら資本金300万円以上
◆資本金1000万円未満なら消費税免除
◆業種によっては少ない資本金もアリ
今日お話ししたのは一般的な株式会社や合同会社を設立する場合の目安です。もちろん事業によってはこの例に当てはまらないことも考えられます。必要な許認可、起業後に受けやすい融資や補助金、定款の書き方等、分からないことがあったら専門家に相談するのをおすすめします。
弊所では会社設立に関する書類作成から、補助金の申請や許認可申請までサポートしております。ぜひお気軽にご相談ください。誠心誠意お手伝いさせていただきます。
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