以前のコラムでは株式会社と合同会社について簡単にご説明しました。新たに設立される法人として最も多いのがこの2つの営利法人です。一方で営利を目的としない法人格というものが存在します。それが今日お話しする一般社団法人、一般財団法人、特定非営利活動法人(以下NPO法人)と呼ばれる団体です。
①営利を目的としないってどういう意味?
営利を目的としないと言われると、まるで収益のあがる事業をやってはいけないの?と思うかも知れません。実際にはそういう意味ではなく「事業で生じた剰余金を分配してはいけない」ということなんですね。つまり働いてくれた従業員に対してお給料や役員報酬の支払いをすることは問題ありません。株式会社の場合は剰余金(会社がその期に稼いだ利益)を株主に現金で配当しますが、一般社団法人やNPO法人などは配当してはいけないですよ、ということです。あくまで剰余金については団体の活動目的を達成するための費用に充てるのが非営利団体の基本です。
②一般社団法人・一般財団法人・NPO法人 どう違うの?
◆「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいているのが一般社団法人、一般財団法人です。
共通の目的を実現しようとする「人」の集まりが社団法人で、一定の目的を実現しようとする「財産」の集まりが財団法人です。一般社団法人の例としては同窓会・業界団体・学術団体・職能団体・自治会・町内会などが挙げられます。一般財団法人の例としては美術館・博物館・環境事業・緑化事業などが挙げられるでしょう。
そして一般社団法人については区分を見ていくとややこしい話になっていきます…
一般社団法人は非営利団体ですよ、という話をしたばかりなのですが区分上は営利型と非営利型に分かれているのです。あくまで剰余金の分配はしないことを基本として、一定の条件を満たした一般社団法人だけが非営利型に分類されて税制上の優遇措置を受けられます。条件を満たしていない場合は営利型とされ優遇はしてもらえません。
立ち上げた一般社団法人が行政庁の定める厳格な要件を満すことができれば、公益認定を受けることができます。公益社団法人、公益財団法人となればさらなる税制優遇措置が得られますがこのハードルはとても高いです。行政庁とのコネやパイプが欲しくなってくるレベルです。
◆「特定非営利活動促進法(NPO法)」に基づいて法人格を取得したのがNPO法人です。
NPO法人として法人格を取得するには所轄庁による審査を受けて認証を得る必要があります。またその事業は法律で定められた20種類の特定非営利活動を主活動としていなければなりません。その上で最低10人の社員、3人の理事、1人の監事が必要です。その他には本業の特定非営利活動以外の事業を行う場合は赤字を出してはいけない、収益は特定非営利活動に充てるなどの制限もあります。
20種類の特定非営利活動とは「不特定多数のものの利益の増進に貢献する活動」とされていて、以下のようなものが該当しています。
・保健、医療又は福祉の増進 ・社会教育の推進 ・街づくりの推進
・観光の振興 ・環境の保全 ・学術、文化、芸術又はスポーツの振興
NPO法人のメリットとしては社会的信用が高まる点が大きいです。国や地方公共団体の補助金や助成金を受けやすいですし、活動をバックアップしてもらうこともできます。活動が広く知られれば人材の確保も容易でしょう。また通常の法人と比べて大きな税制優遇措置が受けられるのも魅力です。
③一般社団法人・一般財団法人とNPO法人 設立が簡単なのは?
同じ非営利活動団体ではありますが、その設立に関してはだいぶ条件が違ってきます。特にNPO法人は一般社団法人や一般財団法人に比べて時間も手間もかかってしまいます。わかりやすく表にしてみるとこんな感じです。
一般社団法人 | 一般財団法人 | NPO法人 | |
---|---|---|---|
設立手続き | 設立登記のみ | 設立登記のみ | 所轄庁の認証後、設立登記 |
設立時に必要な資産 | 不要 | 300万円以上 | 不要 |
設立に必要な人数 | 最低2人以上 | 1人でも可能 | 最低10人以上 |
社員数 | 2人以上 | 1人以上 | 10人以上 |
理事 | 理事1人以上 | 理事1人以上・監事1人以上 評議員3人以上 | 理事3人以上 監事1人以上 |
認可・認証 | なし | なし | あり(認証) |
設立期間 | 1~2週間程度 | 1~2週間程度 | 4~5カ月 |
法定費用 | 112,000円 | 112,000円 | 不要 |
所轄庁報告義務 | なし | なし | あり |
こうしてみるとNPO法人は条件が厳しいのは感じていただけると思います。また提出書類に関してもNPO法人は一般社団法人や一般財団法人に比べて圧倒的に多いですし、2カ年度分の事業計画書・活動予算書が必要になります。他方で一般社団法人や一般財団法人に比べて税制面での優遇措置、信用の程度において優れています。
2008年に施行された「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」によって非営利型一般社団法人が設立しやすくなったため、NPO法人設立のメリットはそれほど大きくなくなってきています。しかしメリットは依然としてありますので、どのような法人を設立するのかはよく検討していく必要がありますね。
行政書士は事業目的から最適な法人を提案しつつ、必要となる定款案の作成から公証役場への提出までお手伝いすることが可能です。また補助金申請サポートも私たちの得意分野ですので、法人設立にあたって疑問や不安が出てきたらお気軽にご相談ください。誠心誠意お手伝いいたします。
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