日常のあらゆるシーンで出てくる契約。生活上の契約からビジネスシーンの重要な契約まで、私たちの社会は契約がつきものですが安易な契約はトラブルに発展してしまうことも。そこで今回の話題は「契約の成立」です。
①契約自由の原則と意思表示(申し込み)
前提として、契約には契約自由の原則というものがあります。これは民法の条文にはっきりと書いてあるので見てみましょう。
第521条 1・何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。 2・契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。 |
契約を締結するかどうか、誰と契約するか、どんな内容を契約するかは当事者の自由と定められています。そして契約の成立については以下のように規定されています。
第522条 1・契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申し込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。 2・契約の成立には、法令に特別に定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。 |
ここで気を付けていただきたいのは、相手に意思表示が到達した時点でその意思表示は有効になるという点です。意思表示が相手方に到達したとされるには、相手の支配権に置かれれば足りるとされていて、相手が了知することまでは必要としないと考えられています。こう言われても良く分からないですよね、そこで以下に想定される事例を書いてみます。
Aさんは中古車販売会社Bから車を購入することにした。Aさんは「売ってくれるなら5月31日までに承諾の意思表示をしてください」とB社に申し入れた。 B社は5月28日に郵送で承諾の通知をしたが、Aさんの配偶者が通知を引き出しに入れてしまったのでAさんは通知に気づかなかった。 Aさんは契約が成立しなかったと思い、別の中古車販売会社から車を購入した。その後7月になって引き出しの中にあったB社の通知を発見した。 |
このような事例において、AさんとB社の契約は成立していると考えられます。つまりAさんは別の車を買ってしまったからもう要らないよ、とは主張できませんので代金をB社に支払う必要が生じるのです。
②子供がスマホゲームに高額課金してしまった! どうにかならない?
近頃ニュース等で耳にする機会の多くなったスマホゲームへの高額課金。大人が自分の意思で課金するならまだしも、子供がいつの間にやら課金してしまって親に高額な請求が来る事例が全国で発生しているようです。ネットでの課金も契約ですから、契約の有効性が焦点になります。
親の立場としては「子供が勝手に課金したのに支払う義務があるの?」と思ってしまいますよね。では未成年者が行った課金は法的に有効なのか?という観点から軽くご説明します。
◆未成年者は制限行為能力者である
民法では18歳未満を未成年者としています。そして未成年者は制限行為能力者として特別に保護されることになっています。制限行為能力者なんて聞いたことがない方がほとんどではないでしょうか。
行為能力とは単独で確定的かつ有効な意思表示ができる地位・資格をいいます。言い換えれば一人で有効な取引などを行うことができる能力のことです。
つまり未成年者はこの能力が不十分なので法律で保護しましょう、と民法は言っているわけですね。それが未成年者取消権といわれる民法5条です。
第5条 1・未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。 2・前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。 |
この条文に出てくる法定代理人というのは通常だと親権者になります。もし親権者がいない場合は未成年後見人が該当します。
さて、条文を見ると「なんだ、取り消しできるじゃないか!」と思われるかもしれませんが、なかなか難しいのが現実のようです。
◆未成年者取消権が使えない?
条文には親の同意を得なければならないと書いてあるのですが、この同意がなかったことを証明するのが難しいとされています。親が子供に「課金しても良いよ」と言ってしまった場合は同意とみなされることもあります。「まさかこんな大金だとは思わなかった!」と主張したいところですが、同意は同意だと言われかねません。
そして民法は未成年者取消権で未成年を保護していますが、実はこの保護が効かない場合もしっかりと民法に書いてあります。
第21条 ・制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。 |
難しい書き方してますが、要するに未成年が「自分は大人だ」とウソをついて契約したら取り消せないよ、ということです。
消費者庁によるとスマホの画面で「成年ですか?」という問いに「はい」とクリックしただけで 詐術=ウソ をついた、とはみなさないとしています。しかしゲーム事業者側が「未成年者に対する警告の意味を認識させるに足りる内容の表示をしていたか、などを総合的に検討して判断する」としているので、一概に詐術に当たらないとも言えないようです。
他にはクレジットカード会社の規約に親の監督責任を規定している場合があります。親の過失が原因とみなされて返金に応じてもらえない場合もあるようです。
◆まずは消費生活センターに相談を
消費者庁は全国共通の局番なしで「消費者ホットライン188」を設置しています。また全国各地の消費生活センターで相談も受け付けていますので、まずは相談してみるのがおすすめです。
さて、今回は契約のお話をさせていただきました。身近な存在だけれどもいざ書こうと思ったら難しい契約書、そんな時は私たち行政書士が力になります。法律文書作成のプロたる行政書士なら、契約書作成にあたって様々なアドバイスが可能です。あやふやな内容で契約書を作成したら後になってトラブル発生!なんてことの無いように、ぜひお気軽にご相談ください。
⇩