建設業をすでに営んでいる方でも、建設業許可はまだ取得していないケースは多いのではないでしょうか。建設業許可申請は多数の書類を集めなければいけませんので、負担になるのは確かです。ですが、手間をかけるだけのメリットがあります。そこで今日は国土交通省が公表しているデータを見つつ、建設業許可のお話をしていきます。
①そもそも建設業許可とは?
データを見る前に、まずは建設業許可とは何なのか?というところからチェックしていきましょう。
建設業法には以下のような規定があります。
◆1・複数の都道府県の区域内に営業所を設けて営業しようとする場合は、国土交通大臣の許可を得る必要がある
◆2・一つの都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業する場合は、都道府県知事の許可を得る必要がある
◆3・軽微な建設工事のみを請け負って営業する場合は、許可を受ける必要はない
ここでいう営業所とは「本店・支店・支店に準ずる営業所」とされています。請負契約の見積り、入札、請負契約の締結に係る実体的な行為を行う事務所であれば、契約書の名義人が事務所を代表する者であるかは問われません。
また軽微な建設工事とは以下の2点が示されています。
①建築一式工事にあっては1500万円に満たない工事又は延べ面積が150㎡に満たない木造住宅
②建築一式工事以外の建設工事にあっては500万円に満たない工事
1件の工事を複数の契約で分割したとしても、請負代金の合計額が500万円を超えてしまった場合は建設業許可が必要になります。
ある程度事業の規模を大きくしていきたい、500万円を超える注文を受注できるようにしたいなら建設業許可を取得するべきでしょう。
②一般建設業許可と特定建設業許可
ざっくり言ってしまうと、注文を受けた元請け業者が下請け業者に対して1件4500万円(建築工事なら7000万円)を超える工事を契約する場合に必要なのが特定建設業許可です。それ以外は一般建設業許可となります。
ちなみに発注者から直接請け負う金額に制限はありませんので、下請け契約を結ばないなら一般建設業許可で大工事をやっても問題ありません。
また特定建設業許可は元請け業者に対する規制なので、下請負人として工事をするなら規制は受けません。
③実際どれくらいの業者が許可を受けているの?
建設業許可は土木一式工事、建築一式工事、大工工事、左官工事など全29種類があります。
令和4年に国土交通省が公表した業種別許可総数のデータによると総数1,673,673の業者が許可を受けています。
一般建設業許可業者数が一番多かった平成12年に比べると、建設業許可業者数は▲22%と減っていますが、業種別許可総数は△20.2%と増加しています。
つまり全体としての許可業者数は減ったけど、複数業種の許可を受けた業者が増加しているため業種別許可総数は増加したということです。一社で複数の許可を取得するのが大きな流れと言っていいでしょう。
次に許可を受けた業者の業種別許可取得率をグラフにしてみました(下図の場合、とび・土木工事業なら許可業者全体の37.2%が取得しています)。
④建設業許可を受けるメリット&デメリット
データにも出ていますが、近年では建設業許可を取得する割合が増加しています。元請けから許可を取得してほしいと言われるケースもあるようです。
許可取得のメリットについては以下のようなものが考えられます。
●信用力が増加するので下請け工事の受注や銀行の融資を受けやすくなる
●公共事業に入札できるようになる。入札に必要な経営事項審査は許可取得が前提です
●500万円以上の発注に対応できる
逆に取得のデメリットは以下のようなものがあげられます。
●申請手数料 知事許可90000円・大臣許可150000円の負担
●事業年度が終了したら決算変更届を提出しなければならない
●5年ごとに免許の更新が必要
●役員変更など重要な変更があった場合は届け出が必要
⑤まとめ
許可を取得することによって細々とした手続きや手数料の支払いが増えるのはデメリットですが、得られるメリットはずっと大きいと言えるでしょう。大きな仕事を1件受注できればお釣りがくる計算です。
将来の事業展開を見越して、建設業許可の取得を検討することをお勧めします。
建設業許可は法人だけでなく個人事業主(一人親方)でも取得できます。ただ、取得に向けて動き出す場合にはクリアしなければならない要件と該当してはいけない欠格要件が存在します。要件については申請者ごとに異なる点があるので、個別に確認していかなければなりません。
申請にあたっては揃えなければならない書類が多数ありますので、もしご自身だけで手続きするのが難しいと感じたなら、専門家に相談しましょう。
行政書士は法律文書作成のプロフェッショナルとして、要件確認から書類の作成まで一貫してお手伝いすることができます。ぜひお気軽にご相談ください。
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