以前、遺産分割に関しては軽くご説明しましたが、今回は遺産分割をしなかったり遅れてしまった場合はどうなるのか?というテーマでお話ししていこうと思います。面倒で手間のかかる遺産分割ですが、放置しているともっと面倒なことになってしまいますよ!
①遺産分割に期限はある?
被相続人が亡くなって相続が始まると、まずは遺言書を確認します。もし遺言書があれば、遺言書の内容に従って遺産分割がされますが、無い場合は相続人全員で話し合って遺産分割をしていくことになります。いわゆる遺産分割協議というやつですね。
実は遺産分割自体に期限というものはありません。ですので何年かかっても遺産分割協議を続けることは可能です。ですが相続手続きには個別に期限が設けられているものがあるため、注意が必要です。
①相続放棄・限定承認は3ヶ月以内
②被相続人の所得税の準確定申告は4ヶ月以内
③相続税の申告・納付は10ヶ月以内
④遺留分侵害額請求は1年以内
⑤死亡一時金の受け取り請求は2年以内
⑥生命保険の受け取りは3年以内
⑦相続した不動産の名義変更の登記は3年以内(2024年に義務化です!)
※相続手続きの起算点は、自分のために相続の開始があったことを知った日からになります。例えば疎遠だった親戚が亡くなり、相続が始まっていることを知らなかった場合などは起算点が死亡日から大きくずれることになります。
遺産分割が遅れてしまうと保険金の受け取れない、死亡一時金が受け取れない、相続税の申告が間に合わないといった問題が出てきます。
②遺産分割が遅れてしまうのはこんな時
遺産分割が遅れてしまうのには様々な理由がありますので一部を挙げてみます。
・遺産分割協議をしたけど話がまとまらない
・どれだけの遺産があるのか分からなくて手が付けられない
・相続人の中に行方不明者がいて協議ができない
・相続人の中に未成年や認知症になってしまった高齢者がいる
このような場合では遺産分割が中途半端に止まってしまったり、そもそも遺産分割協議がされていなかったりします。
③遺産分割が遅れたときのデメリット
遺産分割に期限はないからといっても、遅れたり放置してしまうとデメリットが出てきます。遺産分割がされないときに生じるデメリットは様々ですが、主なものをいくつかご紹介します。
①遺産の相続ができない
遺産分割がされるまでは、被相続人が残してくれた財産に関して相続することはできません。手つかずで残しておかなければなりませんので、勝手に一部を使ってしまうのはダメですよ。
②遺産分割されていなくても税金は来る
不動産の場合、たとえ遺産分割が完了せず所有者が決まっていなかったとしても固定資産税などの税金は請求されます。請求はすでに亡くなっている被相続人に来ますが、当然支払いは相続人がすることになりますので、誰がどれだけ払うのか?という新たな揉め事になるかもしれません。また不動産なら管理費用が発生しますし、売却もできません。
③相続財産が無くなってしまうリスク
相続開始から何年も経過すると、骨董品や高価な物品、宝石類などがどこに行ったか分からない、なんてこともありえます。特に引っ越しや家の建て替えで家財を整理すると、間違って捨ててしまったり壊してしまうことがあります。無くなってしまったら、後から「あったはずなのに!」と言ってもどうにもなりません。
④2度目の相続が発生してさらに複雑化
遺産分割が完了しないまま相続人の1人が無くなってしまうことがあります。このようなケースは数次相続と言われ、非常に権利関係が複雑化していきます。代襲相続については以前にお話ししていますが、よく似ているけれど違うパターンです。
代襲相続 = 相続開始前に相続人が既に亡くなっていた
数次相続 = 相続開始後に相続人が亡くなった
代襲相続と数次相続では、決定的に異なる点があります。それは亡くなった相続人の配偶者が権利を持つかどうかです。代襲相続ではあくまで直系の卑属(子供や孫)に相続されることになりますが、数次相続の場合は亡くなった相続人の配偶者と直系卑属が相続する権利を持つことになります。こうなると血のつながりのない配偶者が相続にかかわって来るので、さらに分割協議が難しくなってきます。
⑤相続手続きの期限をオーバーしてしまう
さきほど挙げた7つの例を見ると、せっかく受け取れるお金が受け取れなくなってしまいます。また相続税の納税が遅れてしまうと延滞税が発生しますし、場合によっては財産を差し押さえられる可能性もあります。
④遺産分割はなるべく早く進めましょう
相続はとても大事な財産や権利にかかわる手続きになりますので、慎重にやりたい気持ちは良く分かります。ですが遅れてしまうとデメリットがどんどん出てきます。
受け取れるお金も受け取れなくなりますし、相続放棄が遅れると借金まで相続することになってしまいます。自分が持っていた遺留分を請求することができない、相続税の延滞税を請求される等々、避けたいデメリットがどんどん出てきます。
できる限り早めに進めて、損のないスムーズな相続を目指しましょう。
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