産業廃棄物収集運搬業 車両登録の注意点

 以前、産廃収集で使用される車両の種類についてはお話ししました。そこで今回のテーマは、実際に申請するにあたって注意したい点とはどのようなことか?について説明していこうと思います。

①収取運搬車両の表示義務

 産業廃棄物収集運搬に使う車両については、その車体にいくつかの情報を表示する義務があります。また表示だけでなく、環境省令で定められた書面を備え付けておかなければなりません。

 車体に表示すべき内容

◆産業廃棄物の収集又は運搬の用に供する運搬車である旨

◆許可業者の氏名又は名称

◆統一許可番号

 表示の注意点
 ・見やすいこと
 ・鮮明であること
 ・両側面に表示すること
 ・識別しやすい色の文字であること

 表示に関しては、【特別管理産業廃棄物】の運搬だとしても【産業廃棄物】と表示して問題ありません。また左右で表示位置が違ったり、荷台や被牽引車に表示しても構いません。
 表示する文字は原則として車体に印刷されたものでなければなりませんので、手書きは認められません。また略語や屋号の使用は一見して産業廃棄物を運んでいることが分からないため不可です。シートなどで表示が隠れてしまっても違反となりますので注意しましょう。

 最近はネット通販などでマグネットシートタイプが販売されています。原則としては印刷することが求められていますが、着脱可能なマグネットシートタイプでも問題ありませんので、施工費用を安く抑えるならマグネットシートがお勧めですよ。

 車内に備え付けるもの

◆産業廃棄物収集運搬業許可証(写し)

◆産業廃棄物管理票(マニフェスト)

 マニフェストとは、産業廃棄物が適正に処理されているかを確認するための管理伝票です。

 マニフェストの作成は排出事業者が行い、収集運搬業者に廃棄物が引き渡されると交付されます。収集運搬業者は中間処理施設へ廃棄物を引き渡し、同時にマニフェストも引き渡すことになります。

 マニフェストは複写式で、A票、B1票、B2票、C1票、C2票、D票、E票の7枚綴りとなっています。それぞれ役割が異なっており、排出業者、運搬業者、処分業者ごとに記入する事項が決まっています。
 運搬業者、中間処理業者、最終処分業者はそれぞれ排出事業者に伝票の一部を送付する義務があります。これは確実に廃棄物が運搬され、処理されたことを証明し、またどのように廃棄物が流れたかを追跡できるようにするためです。

②ディーゼル車規制に適合していますか?

 高度経済成長期、我が国は大きな成長率を記録し経済が急拡大しましたが、その成長を支えたのはトラックによる大規模輸送でした。しかし、経済成長の代償として公害が大きな社会問題となり、国は自動車の排出ガス規制を開始します。

 現在これらの規制は、国が施行する自動車NOx・PM法と、各都道府県が独自に定めるディーゼル車規制条例の2本立てとなっています。

 特に都道府県のディーゼル車規制条例は、対象となる地域に対する乗り入れや通過を一切禁止する厳しい規制としていることが多いので、運送業であろうと産廃収集運搬業であろうと、この条例に適合した車両を用意する必要があります。

◆どのような車が規制対象なの?

 ディーゼル車規制条例という名前の通り、ディーゼル車が対象です。車検証で燃料が軽油とされている場合はディーゼル車となります。

 一口にディーゼル車といっても多種多様ですが、乗用車の場合は排出ガスが少ないため規制の対象となっていません。
 都道府県ごとに若干の違いはありますが、規制対象をまとめるとこのようになります。

◆型式をもとに規制対象か確認

 車検証の型式からディーゼル車規制の対象になっているか確認する方法があります。
 車検証の型式を見ると、【型式】と【原動機の型式】【型式指定番号】などの記載がありますが、チェックしてほしいのは【型式】の部分です。

 この型式のアルファベット部分が、自治体の規制対象として記載されている場合は車検を通していても通行できません。

 以下は東京都が規制の対象としている型式です。

①記号のない昭和54年頃まで製造された車両

②U、W、S、P、N、K、KA、KB、KC

③KE、KF、KG、KJ、KK、KL、HA、HB、HC、HE、HF、HM

※③については車両によって適合している車両があるため、メーカー又は都の環境局に確認が必要です。

◆規制対象だった場合の対策は?

①各都道府県の条例に適合した車両に買い替える

②各都道府県が指定した粒子状物質減少装置を装着する

 粒子状物質減少装置とは、ディーゼルエンジンから排出される排ガスをフィルターに通して、微粒子状物質(PM)を捕集して減少させる装置です。
 この装置は自動車のマフラーに装着されるもので、各メーカーから様々な種類の製品が販売されています。
 DPD、DPF、DPRと呼ばれるこの装置ですが、メーカーごとに呼び方が異なるだけで役割は同じです。

 DPD ⇒ いすゞ
 DPF ⇒ マツダ、三菱ふそう、日産
 DPR ⇒ 日野、トヨタ

 私も以前は業務でいすゞのトラックに乗っていましたので、PM減少装置=DPDだと思っていましたが、いすゞ以外は呼称が異なるのですね。

 ディーゼル車規制の対象となってしまう場合であっても、このPM減少装置を装着すれば通行可能になります。ただ、この装置はとても高価ですので、後から装着するよりも新しい年式の車を用意した方が効率的な場合もあるでしょう。
 一般的に新品のDPDやDPFを装着するには100~120万円ほどのコストがかかりますので、購入予定の車両がある場合は型式のチェックをしておきたいですね。

③まとめ

◆産業廃棄物運搬車両には表示義務がある

◆都道府県ごとにディーゼル車規制が施行されている

◆微粒子状物質減少装置を付ければ通行できるがコストはかかる

 今回は産業廃棄物収集運搬業に必須な車両に関する注意点をお話ししました。
 産業廃棄物についてはその性質上、行政の審査はどうしても厳格になります
 申請で不安があったり、書類作成をしている時間がとれないときは専門家に相談することをお勧めします。

 弊所では廃棄物収集運搬業許可申請だけでなく、建設業許可申請、法人設立などもサポートしております。初回相談は無料で承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。