遺産分割とは?

 亡くなった方が遺言書を作成していた場合は、遺言書の内容に従って遺産が分割されることになります。では実際に遺言書を用意している人がどれだけいるかと言いますと、実は全体の6.8%にしかすぎません。高齢になるにつれ用意している人は増えますが、それでも75歳以上で11.4%しか用意していないのが現状です(平成29年度法務省統計)。
 遺言書が無い以上、相続人同士で話し合いをして誰がどれだけの遺産を相続するか決めていかなければなりません。この話し合いによる遺産の分配を遺産分割協議と言います
 そこで今回は遺産分割をテーマにお話ししていこうと思います。

①相続人の確定&財産調査が必要

 相続が発生したら、まずは遺言書を探しましょう。そして次に役所へ行って戸籍を取得し、誰が相続人になるのかを確定します。また戸籍収集と並行して被相続人(亡くなった方)がどれだけの財産を持っているのかを調べなければなりません。

 財産調査は不動産、銀行預貯金、株式、保険など様々なので、場合によっては行政書士や弁護士、司法書士に調査を依頼することもあります。

 相続人が判明し、財産調査が完了したらいよいよ遺産分割協議に入っていきます。

②遺産分割協議は相続人全員の参加が必要

 原則として、共同相続人は自由に遺産を分割することができます。ですが遺産分割協議を有効に成立させるにはルールがあるので注意してください。
 遺産分割協議は共同相続人全員の参加が必要になります。そしてもし一部の共同相続人を除外し、又はその意思を無視してしまうと、その遺産分割協議は無効とされてしまいます。
 まさにココが遺産分割協議の難しいところです。全員一致に至らず何年も分割協議が終わらない、といったケースがしばしば見られます。

 どうしても協議がまとまらない場合は家庭裁判所に調停を申し立てることができます。それでも話がまとまらずに調停不成立となった場合、最終的には家庭裁判所の審判に移行して裁判官が遺産分割を行うことになります。
 調停や審判となると手続きが難しくなってくるため、専門家に依頼することが多いですがその費用は決して安いものではありません。おおよそ30~50万円の着手金が必要になりますし、遺産の総額によってさらに高額になることも考えられます。ですので、できることなら裁判所に持ち込む前に決着するのが理想です。また裁判官は法定相続分に基づいて遺産分割することが多いですので、散々もめたあげく法定相続分で決着!なんてこともあります。まるで骨折り損のくたびれ儲けです。

③主な遺産分割方法は4パターン

 遺産の種類は様々ですので、必ずしも法定相続分のとおりに分割できるとは限りません。ですので遺産の種類に応じた分割方法を選んでいく必要があります。

◆現物分割
 自宅は長男、銀行の預貯金は次男、株式は長女など、遺産そのものを現物で分割する方法です。非常に分かりやすいので相続では最も採用されやすいですが、必ずしも価値が同じではないですので公平性に問題があります。

◆代償分割
 相続財産が主に不動産しかなく、現金が少ない場合にとられる方法です。例えば自宅を長男が相続した場合、次男と長女に対して相続分に見合った金銭を支払い、これによって公平な相続を達成する方法です。ところがこの方法の場合、代償金は即時一括払いをしなければなりません。そのためこの例では長男に十分な貯金が無ければ採用できない方法です。

◆換価分割
 相続財産が自宅しかなく、相続人に貯金が無い場合ですと代償分割ができません。このようなときは自宅を売却して金銭に換えて分割する方法をとることができます。この場合は不動産屋に仲介手数料を支払う必要がありますし、すぐに買い手がつかなければ換金できませんので時間がかかる、といったデメリットがあります。

◆共有分割
 土地や建物などの不動産に多いのが、相続人同士の共有財産にしてしまう方法です。この方法ではそれぞれ持ち分を所有することになりますが、共有にすると売却したい場合や建て替え時に全員の承諾が必要になってしまいます。後々になってからトラブルになりやすいのであまりお勧めしません。

④協議がまとまったら遺産分割協議書を作成

 遺産の分割について、全員一致で協議がまとまったら遺産分割協議書を作成しましょう。遺産分割協議書は法的に必ず必要とはされていませんが、銀行の預貯金、保険、株式等の名義変更や土地の登記申請で必要になりますので実務上は絶対必要と言っていいでしょう

 協議書に決まった様式はないですので、A4でもA3でも構いません。誰の・どの財産を・誰が取得するのかが分かればよいです。ただ、書き方によっては銀行の窓口で不備を指摘されてしまったりしますので、銀行のホームページ等に載っている作成例をチェックしておきましょう。
 遺産が多く、相続人も多数いる場合は自分で作成するのは難しくなってきますので、専門家への依頼を検討してください。遺産分割協議書は行政書士、弁護士、司法書士、税理士などが作成を請け負っています。

 遺産分割協議書は相続人全員の押印が必要になります。一部の相続人は認印での手続きが許されたりもしますが、全員が実印で押印しておけば間違いありませんし安心です
 遺産分割協議書は署名押印が基本となりますが、高齢で手書きが難しい場合等は記名押印でも構いません。
 また遺産分割協議書が複数ページになる場合は契印を、複数の協議書を作成する場合は割印を忘れないようにしましょう。契印と割印は相続人全員分が必要になります。

 銀行や証券会社での手続きでは印鑑証明書をあわせて提出する必要がありますので、遺産分割協議の前に印鑑登録をしておくと手続きがスムーズに進みます。印鑑登録に関しては以前にお話ししていますので読んでみてくださいね。

⑤まとめ

STEP1◆戸籍を集めて相続人を確定&財産調査

STEP2◆相続人全員で遺産分割協議

STEP3◆遺産分割協議書を作成

STEP4◆協議書の内容に従って名義変更

 相続の手続きは戸籍収集から始まりますが、戸籍の見方や収集方法など戸惑うことも多いのではないでしょうか。また財産調査の具体的方法、遺産分割協議書の正しい書き方など馴染みのない手続きが目白押しです。
 ご自身での手続きに不安があったり、手続きの時間がとれないときは専門家への相談をお勧めします。

 弊所では戸籍収集から最後の名義変更まで、相続の手続きをトータルでサポートしております。初回相談は無料で承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。誠心誠意お手伝いさせていただきます。

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