飲食店の開業には防火管理者が必要な場合があります

 飲食店を開業するには飲食店営業許可申請を行う必要がありますが、申請にあたって絶対に必要な人の要件は【食品衛生責任者】です。
 食品衛生責任者については以前に取り上げていますので見てみてくださいね。

 通常の飲食店であれば、食品衛生責任者を雇用(申請人本人が責任者となってもOK)して施設基準を満たせば営業許可を取得することができます

 ですが、収容人数が多い店舗を予定しているなら、食品衛生責任者だけでなく防火管理者を選任しなければなりません

 そこで今回は【防火管理者とは?】をテーマにお話ししていきます。

①防火管理者とは

 飲食店をはじめとして、不特定多数の人が利用したり出入りする建物で火災が発生した場合、その被害は甚大なものになります。

 特に飲食店は厨房で火を使っていることから、防火の重要性はとても大きいと言えるでしょう。

 そこで消防法は一定以上の規模を有する店舗の責任者(運営者等)に対して、火災被害の発生を防止するために防火管理者を選任するよう義務付けています

 防火管理者は防火管理に係る消防計画を作成し、防火管理上必要な業務(防火管理業務)を計画的に行う責任者を言います。

 防火管理者は運営者が兼務することが可能ですので、開業前にあらかじめ資格を取得しておくとスムーズな手続きが可能になります。

②どんな店舗には防火管理者が必要?

 防火管理者は全ての飲食店に選任が義務付けられているわけではありません

 収容人数が30人以上となる場合、防火管理者の選任が必要とされます。
 これは一般的な飲食店だけでなく、風営法に基づいて営業するキャバレーやナイトクラブなども同様です。

 ここで注意していただきたいのは、収容人数のカウントについてです。

 収容するお客さんが30人未満であっても、従業員を加算した場合に30人以上となる場合は防火管理者が必要になります

③防火管理者には甲種と乙種がある

 防火管理者の資格には甲種と乙種の2種類があります。
 ざっくりいうと甲種が上位の資格となり、乙種よりも大きな施設を管理することが可能です。それに対して乙種は管理できる建物に制限がかかっています。

甲種防火管理者

 大規模な建物や、不特定多数の人が出入りする建物(病院・老人ホーム・複合商業施設などの特定防火対象物)を含んだ全ての防火対象物の管理者となることができる資格です。

※以下の施設については甲種防火管理者でなければ選任できません

延べ床面積300㎡以上、収容人数30人以上のの特定防火施設
・特定の人が出入りする延べ床面積500㎡以上、収容人数50人以上の建物
・特別養護老人ホーム、障害者支援施設などの福祉施設は床面積に関係なく収容人数10人以上

乙種防火管理者

 延べ床面積が甲種防火管理者の基準に満たない施設については、乙種防火管理者を選任することができます。

 甲種資格は乙種を含んでいますので、甲種で取得した方が融通が利くので便利です。

④防火管理者になるには

 防火管理者になるには、講習を受講して効果測定に合格する必要があります。一応テストは行いますが、問題は難しいものではないので合格率はほぼ100%となっています。
 あまり難しく考えず、早めに予約を入れて受講してしまいましょう。

講習を受ける場所

 講習については所在地を管轄する消防署の消防長が行うものと、【一般財団法人日本防火・防災協会】が行うものがあります。

 消防長が主催する講習は、各地の消防本部などで行われます。千葉市の場合は千葉市消防局(セーフティーちば)で受講できます。

 消防長が主催する講習の場合、受講対象者が管轄市内で防火管理者に就任する予定である人や居住している人に限定されることが多いので、隣の市町村などでは受講できないケースがあります。

受講料

 消防長が主催する講習の受講料は自治体によって異なりますが、概ね5000~7000円ほどです。自治体によってはもっと安い地域もあります。千葉市の場合は甲種・乙種ともに4400円で受講できます。

 一般財団法人日本防火・防災協会が主催する講習の場合は若干割高になり、甲種8000円・乙種7000円です。

講習内容

 甲種でおおよそ10時間/2日間、乙種で5時間/1日の講習になります。効果測定に合格した場合即日で修了証が交付されることが多いです。
 内容は防火管理に係る制度や資格制度、火気設備取り扱い、消防設備、自衛消防、消防計画の他、危険物、地震、津波、火山についてなど多岐に渡ります。実技訓練もあるので体感型学習会といった感じです。

 乙種の場合は甲種の講習に比べて内容が初歩的なものになります。

⑤受講対象者

 甲種・乙種共に防火管理者の資格はだれであっても取得可能です。
 学歴や国籍の制限はありません

 また防火対象物点検資格者講習を修了した人や、危険物保安監督者として選任された人で、甲種危険物取扱者免状の交付を受けている人などは講習の受講なしに資格が取得できます。

⑥講習を受講したら消防署へ届出する

 講習を受講し終わったら、店舗の所在地を管轄する消防署に届け出ることで資格を取得できます。受講修了証をもらっただけではダメですよ。

 また消防署への届け出に際して、消防計画書を作成して提出するのが一般的です。消防計画書については各都道府県や市町村が書式を公開しています。作成方法が分からない場合は行政書士に作成を依頼することが可能です。

⑦まとめ

収容人数30人以上の店舗は防火管理者が必要

防火管理者には甲種と乙種がある

講習は消防長主催のものと協会主催のものがある

受講したら店舗を管轄する消防署に届出する

 防火管理者は難しい資格ではありません。ただ、都市部などでは受講希望者が多いため予約が取れないケースがあります。
 予約の空きが2カ月先、なんてことも多いので、開店スケジュールに合わせて早めに受講予約を入れておきましょう

 弊所では飲食店の営業許可だけでなく、風俗営業許可申請、契約書作成、補助金申請サポートなどを承っております。

 初回相談は無料で承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。