民泊を始めませんか? 制度をご紹介します

 コロナの影響で低迷した宿泊業界ですが、コロナ収束に合わせて回復傾向となっています。そして復活したインバウンド需要に押され、民泊の設立件数も年々増加しています。

 通常の旅館業と異なり、個人でも運営できるのが民泊の良いところです。私が関わっている民泊も、ひっきりなしに外国人の方から予約や問い合わせが入っています。その分、日々のオペレーションは大変そうですが、うれしい悲鳴と言えるかもしれません。

 一軒家のような小規模建物で行う営業は、その営業スタイルによって準拠する法律が異なります。一軒家を使った営業の代表的な例としては民泊簡易宿泊所があります。どちらもお客さんが一つの建物をシェアするようなスタイルですが、法律的には全く違う施設という扱いです。そこで今回は、いまいち分かりずらい民泊の法律的なお話がテーマです。

①民泊と簡易宿泊所 なにがちがうの?

 旅館業法によると、宿泊料金をもらって人を宿泊させる営業は旅館業であるとされています。そして旅館業を営むには都道府県知事による営業許可を得なければなりません。旅館業申請が許可されると、旅館業許可証が交付されます。分かりやすい例としてはホテル、旅館、民宿などがありますね。簡易宿泊所も旅館業許可を受けたうえで営業しなければなりません

 では民泊はどうか?というと、準拠する法律が異なっています。民泊事業はいままで個別の法律がありませんでしたが、平成29年に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され現在に至ります。

 民泊新法制定の背景には、急増するインバウンド需要に対して宿泊所の供給が間に合わないという問題がありました。需要に応えるため宿泊所を開業しようにも、旅館業許可申請には様々なハードルがあるのでそう簡単に許可を取得することができません。これではいつまで経っても供給が間に合わないので、新しく法律を作って対応することになったのです。

②営業上のルールが違う

 旅館業法に基づく簡易宿泊所と、民泊新法に基づく民泊では様々なルールが異なっています。基本的には旅館業法の方が民泊新法よりも厳しい規制を課しています。その一方で、旅館業は営業日数の規制が無いので大きな利益が見込めますが、民泊には営業日数の上限がありますので、利益は自ずと限界が出てきます。

 また建物の用途についてもルールが異なります。簡易宿泊所の場合は建物の用途を「ホテル・旅館」としなければなりません。そのため、もし今ある建物の用途が「住宅」だった場合は建築基準法に基づいて工事と建築確認申請を行う必要があります民泊の場合は用途が「住宅」のまま許可を取ることが可能ですので、手間のかかる用途変更の手続きが必要ありません。

 風営法や飲食店営業許可で何度も触れた「用途地域」についてもルールが異なります。簡易宿泊所を営業できるのは第一種・第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域に限られていますが、民泊であれば工業専門地域を除く全ての地域で原則として営業可能です。一軒家が多く建っている住居専用地域で営業開始できるのが民泊の大きな強みと言っていいでしょう。ただ、市区町村ごとの条例で民泊営業に規制がかけられている場合があるので要チェックですよ。

③地域によっては特区民泊が可能です

 正式名称は「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」という長い名前ですが、一般には特区民泊という呼称で知られる制度です。特区民泊を営業するためには、対象となっている地域に民泊を開業する必要があります。

 令和6年10月31日時点で特区民泊を導入している自治体は以下のとおりです。

 特区民泊の特徴は、通常の民泊に比べ外国人のお客さんを強く想定している点です。とはいえ、日本人が宿泊することももちろん可能です。

 通常の民泊との大きな違いは営業日数の上限が無いことです。そのため365日の営業が可能なので大きな収益が見込めます。ただ、特区民泊はある程度長期の宿泊を前提に制度が作られているため、「最低2泊3日」以上の日数でなければ宿泊できません。また2泊3日の途中でキャンセルすることもできません。長期の滞在を好む外国人観光客のニーズを意識した結果、このようなルールが設けられました。1泊2日を好む日本人は通常の民泊で受け入れ、2泊3日以上は特区民泊へ、というのが国の想定です。

 施設運営のハードルとしては客室1室の床面積が原則25㎡以上必要、物件所有者と宿泊者の共同使用ができないこと等があります。そのため比較的大きな住宅を使用する必要があるでしょう。

④まとめ

民泊は開業しやすいけど営業日数制限がある

簡易宿泊所は開業のハードルが民泊より高いけど営業日数制限は無い

特区民泊は営業日数制限が無いけど民泊とは違う規制がある

 回復したインバウンド需要に対し、宿泊施設の数は今も足りていません。そのため、民泊の潜在的な需要はまだまだ増加傾向と言っていいでしょう。民泊新法の施行により、民泊の開業はずいぶんとハードルが下がってきました。相続したけど使っていない実家や、安く売りに出されていた戸建て住宅を購入して有効活用するなら、民泊の営業は良い手段となりえます。

 弊所では、民泊の許可申請について建物の測量と各種図面の作成から、申請書の作成までワンストップでお受けしています。また消防設備の専門事業者と提携していますので、許可の取得に必要な消防設備工事も全てお任せください。近年では外国人の経営者様が民泊を開業するケースも多くなっていますので、必要な在留資格の相談も承っております。。

 千葉市では若葉区及び緑区の市街化調整区域及び住居専用地域」特区民泊の対象地域に指定されています。ぜひ民泊の許可申請についてご相談ください。